医療保険が必要か不要かは、大きく議論が別れるところであり、お金のプロであるFPの間でも賛否両論となっています。結局のところ、医療保険は加入すべきなのかを、必要・不要と言われる理由から詳しく解説します。
医療保険にお金を払うくらいなら、貯金しておいた方が良いって話を聞いたんだけど。
ひとつだけ言えることは、貯蓄が十分ある人に医療保険は不要です。
僕はもっとシンプルな答えを欲しいんだよー、ぶーぶー。
確かにYESかNOで答えられれば一番わかりやすいですけどね。でも、保険というのはそう単純に片付かないんですよ。
必要・不要と言われる理由を教えますので、自分はどっちの考えに当てはまるのか、参考にしてみてください。
目次
1.お金の専門家であるFP達でも、医療保険の必要性には賛否両論?
医療保険の必要性については、お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)の間でも賛否両論です。経済評論家達でさえ、意見が分かれているところですね。
それはですね、必要・不要だと言われる理由のどちらにも信ぴょう性があるからです。どちらの理由にも納得できるので、一概に「医療保険は必要だ!」「医療保険は不要だ!」と言えないんですよ。
なので、それぞれの理由を加味した上で、「じゃあ自分だったらどっちの方が良いのか?」と考えることが大切です。
2.医療保険が不要だと言われる7つの理由とは?
では、実際に医療保険が必要・不要と言われている理由を見てみましょう。まずは不要だと言われる理由からです。
2-1.公的健康保険による療養の給付で、支払う医療費は3割にまで減る
そもそも、日本には国民皆保険という制度があるため、国民全員が社会保険から医療保障を受けられるようになっています。
その通り。自営業やフリーランスの人も、国民健康保険に加入しているので、医療保障を必ず受けることができます。
一番わかりやすいのは健康保険による療養の給付ですね。医療費の自己負担割合が3割になるやつです。
そう、それです。
年齢などによって1割負担になることもありますが、基本的に私たちが適用されるのは3割負担ですね。本来支払うべき医療費が3割にまで軽減されるのは、大きな公的保障ですよね。
それに加え、高額療養費制度により、個人が支払う1か月の医療費には、上限が設けられています。
2-2.高額療養費制度の適用で、限度額を超えた医療費を大幅にカットできる
療養の給付で自己負担額が3割になるとはいえ、病気の種類や入院の日数によっては、医療費がかなり高額になってしまうこともあり得ますよね?そんな時、一定金額を上回った分が私たちに戻ってくるんですよ。それが高額療養費制度です。
高額療養費制度によって実際に支払う医療費がそれほど高額にならないので、貯金で十分対応できると言われています。
医療保険が不要だと言われている最大の理由が、この高額療養費制度ですね。
2-3.入院時食事療養費で食事代の上限が決まっている
入院中に支払う食事代にも、社会保険から保障を受けることができます。入院時食事療養費と呼ばれる保障をご存知ですか?
入院時食事療養費は、一食当たりの金額が260円までになるという保障です。超えた分は社会保険の方で支払ってくれるんですよ。月の食事代が24,180円を超えた時も、その分も負担してくれますよ。
療養の給付・高額療養費制度・入院時食事療養費といった公的保障のおかげで、ケガや病気によって支払う金額の相当部分が免除されるわけですね。
2-4.傷病手当金によって給料の3分の2が支給される
私たちを支えてくれる社会保障は他にもあります。傷病手当金も、ケガや病気の際に大きな味方になってくれる存在ですね。
傷病手当金は、ケガや病気の療養で働けなくなっても、給料(正確には標準報酬日額)の3分の2にあたる金額が支払われるというものです。最長で1年6か月間支給されますので、働けないことでの大幅な収入減をカバーすることができますね。
ただし、国民健康保険に加入している自営業やフリーランスの方は、傷病手当金が支給されません。支給対象は、サラリーマンや公務員といった人々だけなので、注意が必要です。
2-5.子どもの医療費助成制度が充実している
各自治体には子どもの医療費助成制度が整っています。
自治体によって保障の内容に差はありますが、乳幼児や義務教育就学児の医療費が0円になったり、高校生でも医療費を補助してくれたりすることもあります。
むやみに医療保険に加入するよりは、こうした公的保障を全面的に利用し、差額分だけ貯金から支払う方が理に適っているという意見も多いですね。
2-6.条件が合わないと医療保険に加入していても給付金がもらえない
医療保険は、すべてのケガや病気に対応しているわけではありません。加入する保険商品にもよりますが、条件が合わなければ支給金はもらえないんです。
条件が合わないとそれらがもらえないの?
はい、その通りです。
例えば、以下のようなケースだと給付金をもらうことができません。
|
ちなみに、医療保険では通院給付金の出る商品が少ないです。ケガや病気になっても、通院だけで済んでしまえば、お金がもらえないなんてことも。
このように医療保険に加入しても給付金がもらえない可能性があるので、医療保険を不要だと述べる専門家からは、「支払う保険料をそのまま貯金に回して、そのお金で治療費を支払った方が合理的」、という意見が出ています。
2-7.そもそも、医療保険では元が取れない
医療保険では、ほとんどの人が元を取れずに終わってしまいます。
例えば、毎月5,000円の保険料だと、年間で60,000円、20年間で1,200,000円を支払うことになります。入院給付金が1日10,000円とすると、元を取るためには120日間も入院しなければなりませんよね?
手術給付金が支給されたとしても、相当の期間を入院しなければ支払った保険料分のお金をペイすることができません。
それに加えて、ほとんどの医療保険の商品は掛け捨て型ということもあり、元を取れないケースの方が多いと言われているんです。
参考までにですが、病気別の平均入院日数は以下の通りです。
病気の種類 | 平均在院日数 |
骨折 | 37.9日 |
脳血管疾患(脳梗塞など) | 89.5日 |
心疾患 | 20.3日 |
胃がん | 19.3日 |
糖尿病 | 35.5日 |
高血圧疾患 | 60.5日 |
乳がん | 12.5日 |
上記のトータル平均 | 39.4日 |
(厚生労働省 「平成26年・患者調査より)
また、退院患者の在院機関別の割合は以下の通りです。
在院期間 | 在院割合 |
0~14日 | 67.0% |
15~30日 | 16.2% |
1~3か月 | 12.6% |
3~6か月 | 2.6% |
6か月以上 | 1.6% |
3.医療保険が必要だと言われる7つの理由とは?
どれも筋の通った理由ですからね、そう思う気持ちもわかります。ですが、決めつけるにはまだ早いですよ。今度は、必要だと言われる理由について見ていきましょう。
3-1.病気やケガのための貯金を形成できない可能性がある
ケガや病気になった時、医療費をまかなえるだけ貯金に余裕があれば、確かに医療保険は必要ありません。ただ、それだけの貯金を用意できるかについては、疑問の残るところです。
医療保険に支払う保険料分を貯金に充てていたとしても、人生にはお金を使う様々なイベントがあり、そちらにそのお金を使ってしまうことが考えられます。
また、「この貯金はケガや病気で入院した時のものだから、絶対に手を付けない」と鉄の意志を持ち続けていたとしても、十分な金額が貯まる前に重い病気で長期の入院になってしまったら、治療費を用意できない可能性があります。
こういった場合、医療保険に加入しておけば十分な貯蓄が形成できていなくても、医療費で困ることも、働けないことによる収入減で悩むこともありませんよね?何よりも、いざという時の「安心感」を持つことができます。
貯蓄をしっかり形成し、維持し続けることが厳しいようであれば、医療保険を検討すべきでしょう。
3-2.医療費以外の出費が大きい
入院中にかかる費用は、手術費や入院費だけではありません。例えば家族が病院へ通う費用、普段なら購入しないものの購入費用、ヘルパーを頼まなければいけない費用など、こういったお金は意外と負担が大きいです。
このような費用に即座に対応できるだけの貯蓄があれば話は別ですが、先程も話したように、十分な貯蓄を形成できるか、維持し続けられるのかには一抹の不安を感じます。
そういった場合を想定し、医療保険は必要だという意見が専門家から出ています。
3-3.入院中の収入減を補ってくれる所得保障の性質がある
企業に勤めるサラリーマンであれば、傷病手当金が支給されるので、入院中の収入源にそこまで困ることはないでしょう。
ですが、自営業やフリーランスの人は傷病手当金が支給されないので、大幅な収入源に困ってしまいます。また、その場にいて仕事をする必要性が高い人(医師・弁護士・調理師など)も、入院してしまえば給料が入ってこなくなるわけですから、何かしらでカバーする必要があります。
その点、医療保険には入院中の収入源を補ってくれる所得保障の性質があるので、医療費のカバー以外にも有用性があります。
3-4.公的保険では個室入院(差額ベッド代)や先進医療などを保障できない
医療保険が不要だと言われる理由には、公的保障の存在が大きいです。ですが、この公的保障の対象外になるものについては、医療保険に加入していなければすべて自己負担となってしまいます。
対象外となる具体的な例は、個室入院による差額ベッド代や先進医療による治療費などが挙げられますね。
男女の別なく、症状によっては個室に移る可能性は十分にありえますし、先進医療の治療が必要になる場面も絶対にないとは言い切れませんよね?
こういった場合の、いわばセーフティガードの役割を果たすのが医療保険です。すべてが公的保障でまかなえるのであれば医療保険に入る必要はまったくありません。しかし、現実はそうではないので、医療保険を真剣に考えるべきだと言われています。
3-5.公的保障だけだと、入院頻度や病気によっては負担が重くなりすぎる可能性がある
また、公的保障だけを頼りにしていると、長期の入院や病気の症状によっては、個人の負担が重くなりすぎるケースが考えられます。
ここでいう負担は医療費だけに留まりません。入院中の収入減やその他にかかる出費についても含まれます。
傷病手当金は最長で1年と6か月。それ以降はお金が支給されなくなるので、高額療養費制度で医療費は何とかできたとしても、生活費で悩むことも考えられます。そもそも、給料が3分の2になって急激に生活が苦しくなる家庭だってありますよね?
加えて、入院が長引けばそれに伴う出費(家族が病院へ通う費用、普段なら購入しないものの購入費用、ヘルパーを頼まなければいけない費用など)も増えます。
ケガや病気で問題となるのは、何も医療費だけではないということも考えなければなりません。
3-6.今後の社会保障の改悪が懸念される
国の財政が逼迫しているのは周知の事実ですよね。そんな中だと、高額療養費制度のような制度が改悪されるケースも予想できます。
さすがに廃止まではいかないと思いますが、上限額が増える可能性は大いにありえると思います。現に、平成27年の1月で、一度改正が行われています。所得区分も増えましたし、自己負担限度額の計算式も変わりました。この時は、年収約770万円以上の層の負担が増えるだけに留まりましたが、次はどうなるかわかりませんね。
国の財政が厳しくなっていけば、高額療養費制度だけではなく他の公的保障も変更される可能性があります。
患者本人の負担が増える未来を、完全に否定することはできませんね。
3-7.加入しておかないと、本当に保障が必要になる老後で困る
残念ながら、それは難しいですね。医療保険が必要だと言われる理由には、「加入しておかないと医療費の補助が必要になる老後で困る」という意見があります。
これは、医療保険が生命保険よりも入りにくい性質を持つからです。歳を取っていく度に、ケガや病気にかかる割合は高くなっていくので、保険会社はそういった人たちの加入を嫌います。
もしも何かの病気になってしまい、今後が不安だからといってそれまで加入していなかった医療保険を検討しても、多くの保険会社は加入を謝絶してきます。入れたとしても、部位不担保(指定された部位と、それに関連する病気の保障がされない)の条件を付けられ、保険料も通常よりも高くなります。
「若いうちは、確かに医療保険の必要性について低く考えがちですが、本当に必要となってくる年齢で困らないためには、やはり今のうちから真剣に医療保険について考えなければいけない」と、医療保険に賛成的な専門家は仰っていますね。
歳を取ってから入ればいいやという考えは通用しないと覚えておきましょう。
4.結局、医療保険は必要なの?
結論として言えることは、貯蓄に十分な余裕がある人には医療保険は不要ということです。逆に言えば、ケガや病気になる前までに貯蓄を形成する自信がない人や、医療費に充てる貯金を確保し続けられない人には必要ということですね。
ちなみに、どれくらいの貯蓄があれば医療保険は不要なのかな?
基本的に150~300万円ほどの余裕があれば、とりあえず安心と言われています。ですが、この金額で絶対に大丈夫というわけではないので、その点は念頭に置いといてください。
医療保険に加入すべきか、現在の医療保険が適切かどうかで迷った時は、お金のプロであるFPに診断してもらいましょう。
5.まとめ
- 医療保険の必要性は、専門家の間でも意見が分かれている
- 医療保険が必要だと言われる主な理由
- 公的保障があるので、実際の医療費はそこまで高くならない
- 傷病手当金で入院中の収入減はカバーできる
- 医療保険に加入してもお金が出ない場合があるし、元が取れにくい
- 医療保険が必要だと言われる主な理由
- 医療費用の貯蓄を形成し、維持していくことは簡単ではない
- 医療費以外にかかる出費の対策に医療保険は使える
- 公的保障は万全ではないので、医療保険で備えておく必要性がある
- 加入しないことで、歳を取ってから後悔することは避けたい
- 十分な貯蓄がある人に医療保険は不要、貯蓄に不安を抱える人は必要
あー、お金持ちになりたい。