私たちの老後を支えてくれる公的年金保険は、国民年金保険や厚生年金保険など、種類ごとに内容が変わってきます。いったいどのような違いがあるのでしょうか?今回は公的年金保険制度を種類別に詳しく見ていきます。
僕たちがおじいちゃんおばあちゃんになった時は、のんびり暮らしたいなぁって。
毎日温泉に入って、よぼよぼの皮膚がさらにふやけるような生活をね。
もらえる年金を上手く使って、無理に働かずにゆったりと……。
でも、年金っていくらくらいもらえるんだろう。
いっぱいもらえるといいなぁ。
ところで、つか夫さんは公的年金保険についてはどの程度知っているんですか?
公的年金保険についてちゃんと知っておかないと、「予想よりも全然年金がもらえない!」なんてことになって、ゆったりまったりな老後を送れなくなってしまうかもしれませんよ?
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目次
1.公的年金保険制度について
そもそも公的年金制度は、今働いている世代が保険料を支払い、そのお金を高齢者などの年金を必要とする人に充てるものです。高齢になった時や障害を負ってしまった時、または死亡してしまった時に金銭的な保障をしてくれます。
高齢時(原則65歳から)からもらえる年金を老齢年金、障害を負った時にもらえる年金を障害年金、死亡してしまった時に遺族がもらえる年金を遺族年金と呼びます。
はい。日本国内に住所を持つ人は必ず公的年金保険に加入しないといけません。そして、これらの公的年金の給付を受けるために、毎月保険料を納付するんです。自分や親の老後を、個人や家族だけで対応しようとすると大変ですよね?なので、それを公的な制度でカバーしようというのが、公的年金保険というわけです。
公的年金保険は「国民年金保険」「厚生年金保険」「共済年金保険」の3つの種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
2.国民年金保険とは?
20歳以上60歳未満で、日本に住所を持つすべての人が加入する公的年金保険が国民年金保険です。国民年金保険の保険料をしっかり納付しておくと、老齢年金・障害年金・遺族年金が必要になった時に給付されますよ。
20歳以上になると、国民年金機構から「国民年金被保険者資格取得届書」というものが届きます。こちらに必要事項を記入し、住んでいる地域の役所や町村役場に提出すると、「年金手帳」と「国民年金保険料納付書」を受け取ることができます。年金手帳は保険料納付の確認に用いますし、将来年金をもらうために必要となってくるものなので、大切に管理しないといけませんよ。後は、その納付書に従って、保険料を納めるといった感じですね。
まあ、つか夫さんも経験したことあるから知っているとは思いますが。
僕、20歳の頃から国民年金保険を支払った記憶がないんだけど……。
あ、そういえばつか夫さんは「学生納付特例制度」を利用していたんでしたっけ。
20歳以上の学生が、在学期間は保険料の納付を猶予してもらえるってやつ!
その学生納付特例制度を利用してたから支払った記憶がなかったんだ。
在学期間中に猶予をもらった保険料はその後支払いましたか?10年以内でしたら支払っていない期間の保険料を追納することができますよ。ちゃんと追納しておけば、将来受け取る年金額が減らずに済みますからね。
国民年金保険って人によってもらえる金額が違うの?
違いますよ。支払った期間によってもらえる金額が変わります。20歳から60歳までの40年間でしっかりと保険料を納めた人には、満額が支払われますが、途中で滞納してしまったりどうしても保険料が支払えない事情があって免除してもらったりした場合は、満額よりも少なくなります。
例えば、平成28年4月以降に支給される老齢年金だと、1年あたりの満額は780,100円です。
ってことは月に直すと65,000円か……。少ない……。
国民年金保険は「基礎年金」と呼ばれるもので、支給される金額が最低限度のものですから少ないと感じるかもしれませんね。老齢年金も障害年金も遺族年金も、厚生年金保険や共済年金保険に比べて、支給される金額が少ないですので。
ちなみに、平成26年度で老齢年金をもらっている人の基礎年金の平均金額は、1か月あたり約54,000 円でした。
皆が満額で老齢年金をもらえているわけじゃないんだね。
満額でも心もとないのに、その金額じゃ生活は苦しいよ……。
そうですね、例え満額もらえたとしても、国民年金保険だけを頼りに老後を過ごすというのは、厳しいかと思います。
2-1.国民年金保険料 毎月の負担額
いい質問ですね。国民年金保険の保険料は、平成28年4月~平成29年3月まで1か月あたり16,260円です。それ以降は金額が上がるようですが、まだいくらになるのかは決まっていないみたいですね。この保険料をちゃんと納付していれば、老齢年金も障害年金も遺族年金も基礎年金分は給付されますよ。
ちなみに、国民年金保険の保険料はまとめて前払いすることができます。
まとめて前払いすると、金額が安くなりますよ!
- 口座振替の場合
前納期間の長さ | 1回あたりの納付額 | 割引額 |
2年前納 | 377,310円 | 15,690円 |
1年前納 | 191,030円 | 4,090円 |
6か月前納 | 96,450円 | 1,110円 |
1か月前納 | 16,210円 | 50円 |
- 現金払いの場合
前納期間の長さ | 1回あたりの納付額 | 割引額 |
1年前納 | 191,660円 | 3,460円 |
6か月前納 | 96,770円 | 790円 |
毎月保険料を支払うよりもこうした一括納付で前納することで、保険料を節約できるんですよ。2年前納をすると、一度に支払う金額は高額ですが、15,690円もお得になりますね。
ただ、口座振替と現金払いでは、前納できる期間が違ってきます。現金払いだと2年前納や1か月前納ができません。
ちなみに、前納したい場合はどうすればいいのかな?
口座振替で前納をする場合は、「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を2月中に金融機関か年金事務所に提出して申し込みします。この用紙は年金事務所の窓口や日本年金機構のwebサイト手に入れることができます。6か月前納の場合は、2月と8月に申し込みできます。また、1か月前納の場合は、2月中でなくても、前納する月よりも前に申し込みをすれば大丈夫ですよ。
現金払いで前納する場合は、4月に納付書が届きますので、それに従って振り込みをしてくださいね。
3.厚生年金保険とは?
厚生年金保険とは、主に会社に勤めている人が加入する公的年金保険のことです。ほとんどの会社で厚生年金保険は適用されているので、会社勤めの方はだいたいこの保険に加入しています。国民年金保険よりも、もらえる年金額が多いことが特徴ですね。
正社員として会社に勤めていれば、会社側が加入の手続きをするので、基本的に自動で加入することになります。そして、毎月の給料から保険料が天引きされるんですよ。ちなみに、正社員ではなくても、正社員の4分の3以上の労働時間と労働日数があれば、パートやアルバイトであっても原則加入することができますよ。
それと、ややこしいところではあるんですが、厚生年金保険の中には国民年金保険が含まれています。
厚生年金保険に加入している人は毎月給料から保険料が天引きされるんですが、実はその保険料の中には国民年金保険の保険料も含まれているんです。厚生年金保険に加入すると、国民年金保険にも自動で加入することになるわけですね。なので、厚生年金保険に加入しておくと、将来老齢年金をもらう時に、国民年金保険分に厚生年金保険分の上乗せがついて支払われるんですよ。厚生年金に加入していると、もらえる年金が増えるというのにはこういった理由があるからなんです。
でもさ、そうすると保険料もかなりお高いんじゃないの?
国民年金保険の2倍とか3倍になるんじゃ……。
実は、ただ単に高くなるってわけではないんです。厚生年金保険の保険料は所得によって変わり、平成28年現在では、月の給料の約18%が保険料として納めることになります
つか夫さんも、毎月の給料から厚生年金保険の保険料が引かれていますよね?
それはですね、会社が保険料の半分を支払っているからです。厚生年金保険は会社と個人で半分ずつ支払うのものなんですよ。なので、実際に負担する保険料は、給料の約9%ほどですね。
そして、この厚生年金保険の保険料が、
「国民年金保険の保険料+厚生年金保険の上乗せの保険料」
という構成になっているので、国民年金保険よりも受け取る年金額が高くなるというわけですね。
要約すると、厚生年金保険の保険料は会社と折半して支払い、それで基礎年金にプラスした金額がもらえるようになるってわけだね。
それで、どれくらい年金がもらえるようになるの?
そうですね、例えば、平成26年度で老齢年金をもらっている人の厚生年金の平均は、1か月あたり約145,000 円でした。これは国民年金保険の支給額も含めての金額です。
こうして支給金額を見ると、国民年金だけの場合にもらえる平均金額に比べて、約2.7倍になることがわかりますね。
それにしても国民年金保険と厚生年金保険でこんなに差があるんだね……。
国民年金保険は、あくまでも基礎年金ですからね。ちなみに、厚生年金制度には扶養という制度がありまして、加入者の配偶者は、保険料を負担することなく国民年金保険の加入者になることができます。配偶者の年収が130万円未満ではいけないなどの条件はありますが、適用されればとてもお得ですね。
はい、その通りです。
3-1.厚生年金保険料 毎月の負担額の例
では、実際にどの程度の金額を、毎月の厚生年金保険の保険料として支払っているのか見ていきましょう。
厚生年金保険の保険料は、厳密にいうと17. 828%です。
例えば、一般的なサラリーマンで月の給料が30万円の人(30歳)の場合。
300,000(円)×17. 828%=53,484(円) 53,484(円)÷2=26,742(円)毎月の保険料は26,742円 |
同じように、給料が40万円だった場合は、
400,000(円)×17. 828%=71,312(円) 71,312(円)÷2=35,656(円)毎月の保険料は35,656円 |
4.共済年金保険とは?
共済年金保険は、公務員や教員などが加入する公的年金保険です。厚生年金保険は会社員が加入しましたよねそれの公務員・教員バージョンというわけですね。
厚生年金保険よりも保険料率が少し安く、もらえる年金も手厚いというのが共済年金保険の特徴でしたが、年金の一元化により年々厚生年金保険と同様の内容となってきています。
例えば、共済年金保険には「職域加算」と呼ばれる年金の上乗せ制度があり、厚生年金保険よりも多くの年金をもらえましたが、平成27年10月に職域加算は廃止されています。完全に廃止されたわけではありませんけどね。
共済年金保険って、加入する組合によって内容に差があるんだよね?
はい、組合によって保険料率などに差があるんです。衆議院共済組合や参議院共済組合、東京都職員共済組合に公立学校共済組合など、数多くの共済組合が存在しているので、組合に入る時は事前に内用を確認しておいた方が良いですね。
共済年金保険は厚生年金保険と同様に、毎月給料から保険料が天引きされ、その保険料の中には国民年金保険の保険料も含まれています。厚生年金保険と少し違うところは、保険料が、
「国民年金保険の保険料+共済年金保険の上乗せの保険料」+「別枠の上乗せの保険料」
という構成になっています。
ってことは、別枠で上乗せした分、年金をもらう時の金額が厚生年金保険よりも増えるってこと?
そういうことですね。
別枠で上乗せするわけですから、保険料は余分にかかりますが。
要約すると、共済年金保険は厚生年金保険の公務員や教員バージョンで、保険料額や支払われる年金額なんかに違いがあるって感じなんだね。
その通りです。
4-1.共済年金保険料 毎月の負担額の例
実際に共済年金保険では、どの程度の保険料を負担するか見てみましょう。
例えば、公立学校の教員として働いている人が入る公立学校共済組合の場合、個人の保険料率は8.639%です。別枠で上乗せする保険料率は0.75%です。
なので、公立学校の教員として働き、毎月の給料が30万円だったとしら、
300,000(円)×8.639%=25,917(円) 300,000(円)×0.75%=2,250(円) 25,917(円)+2,250(円)=28,167(円)毎月の保険料は28,167円 |
同じように、給料が40万円だった場合は、
400,000(円)×8.639%=34,556(円) 400,000(円)×0.75%=3,000(円) 34,556(円)+3,000(円)=37,556(円)毎月の保険料は37,556円 |
でも、別枠で上乗せする保険料がなければ、厚生年金保険よりも安くなっているね。
5.まとめ
- 公的年金保険制度は、老齢・障害・死亡を保障してくれる制度
- 公的年金保険制度には、国民年金保険・厚生年金保険・共済年金保険の3つの種類がある
- 国民年金保険は、20歳以上60歳未満で日本に住所を持つすべての人が加入する公的年金保険
- 厚生年金保険は、主に会社に勤めている人が加入する公的年金保険
- 共済年金保険は、公務員や教員などが加入する公的年金保険
年金って自動的にもらえるものって思っていたから、ちっとも気にかけてなかったよ。
特に教えてくれる人もいなかったし、調べる機会もなかったしなぁ。
保険ってややこしい分野ですから、みなさん敬遠しがちですし。
でも、私たちの生活に関わってくることですから、こういった機会にでも覚えておいた方が良いでしょう。
年金だけで素敵なライフは実現できそうですか?
老後の生活を年金だけに頼るのは、ちょっと現実的ではない気がします。
やはり、ある程度の貯金は考えておかないとですね。