10万円を超えた医療費が戻る?覚えておきたい医療費控除の内容と申請方法

医療費控除 申請

年間の医療費が10万円を超えると、支払った医療費が戻ってくるという話を聞いたことはありますか?
実はこれ、医療費控除のことを指しています。
医療費控除は医療費の負担を軽減してくれる、嬉しい制度です。
今日は、そんな医療費控除にまつわるお話です。
思いがけない医療費の出費とたたかってくれる、頼もしい味方について詳しくみていきましょう。

節子

つか夫さん。
先日、つか夫さんが病院に行った時の領収書を頂けますか?

つか夫

え、捨てちゃった。

節子

病院に行ったら領収書をもらって私にくださいっていつも言っているじゃないですか……。

つか夫

あはは……。
ごめんよ。
ほら僕って健康優良児だから、滅多に病院行かないじゃない?
だからいつも忘れて捨てちゃうんだよね。

節子

もう……。
病院の領収書は節約のためにとても大事なんですよ?

つか夫

え、そうなの?

節子

つか夫さんも、「医療費控除」って名前くらいは聞いたことありませんか?
それの申請に病院の領収書が必要なんですよ。

つか夫

へー……。

節子

あ、その顔は医療費控除のこと軽く見てますね?
いいでしょう、医療費控除がどのくらい節約に役立つか教えてあげます。
医療費ってバカにならないんですからね。

つか夫

う、うす!

 

1.医療費控除とは?

医療費控除

節子

医療費控除とは、医療費を支払った人が受けられる一定金額の所得控除のことです。
年間に医療費を10万円以上支払ったらお金が戻ってくる、とよく耳にするかと思いますが、これが医療費控除にあたります。

つか夫

本当に耳にするだけで、健康な僕には今まで関係のない話だったなぁ。

節子

いいえ、つか夫さん。
医療費控除はつか夫さんだけの問題ではとどまらないのですよ。
家族全員の問題でもあるんです。

つか夫

え、それはいったい……?

節子

その理由をこれから説明しますね。

1-1.医療費控除を受けられる条件

節子

医療費控除を受けるためには、年間に支払った医療費の合計が10万円を超える必要があります。
年間というのはその年の1月1日から12月31日までの1年間を指し、その期間に支払った医療費でなければならないので注意してください。
また、その年の総所得金額が200万円未満だった場合は、10万円ではなく総所得金額の5%の金額となっています。

つか夫

なるほど。
基本的な目安は10万円ってことだね。

節子

はい。
そして、この金額は本人だけではなく、生計を一にする家族のために支払われた医療費も合計できます。
つまり、つか夫さんが年間で5,000円しか医療費を支払わなかったとしましても、私が9万5,000円以上を支払っていますと、医療費控除を受けることができます。

つか夫

そうだったんだ……!
それは知らなかった。

節子

なので、本人の問題だけではなく、家族の問題になるのですよ。
ちなみに、生計を一にしていれば必ずしも同居している必要はありません。
生活費や学費を仕送りしている子どもや、単身赴任している夫なども含まれます。
ただ、裏を返すと例え同居している親族でも、別の収入で生計を立てていると医療費を合算できません。

つか夫

生計を一にしていることが大事なんだね。

節子

はい。
それと!
高額療養費制度を使用して、負担した医療費が戻った場合。
この場合は、支払った医療費から高額療養費制度で戻ってきた分を差し引き、残った金額が医療費控除の対象となります。
この点に気を付けてくださいね。

(高額療養費制度についての詳しい内容は、「医療費が戻ってくる高額療養費制度とは?その金額と申請方法について」をご参考ください。)

1-2.医療費控除の対象

節子

医療費控除の対象には、以下の場合が含まれます。

  • 医師や歯科医師による診療・治療
  • 診療・治療に必要な医薬品
  • 入院の部屋代や食事代
  • 医療機関までの交通費
  • 出産のための入院費
  • 妊娠中の定期検診や検査費用
  • 不妊治療やED治療薬
  • レーシック手術
  • 治療のためのマッサージ・はり・お灸等
つか夫

え、病院までの交通費やレーシック手術の医療費も対象になるの!?

節子

そうなんです。
あと、マッサージ・はり・お灸なんかも適用されますよ。
ただ、単に疲労回復やリフレッシュのために受けたものは対象になりません。
指圧師・柔道整復師などの医療資格を持っているプロに、治療が必要とされて受けたものに限ります。
なので、申請する際には、どこの施設でどのような資格を持っている医師から施術を受けたかを明記しましょう。

つか夫

へー……。
知らないでいたら損しちゃうね。
じゃあさ、逆に対象とならないのはどういったもの?

節子

以下のような場合は、医療費控除の対象にはなりません。

  • 人間ドック等の健康診断費用
  • 予防注射の費用
  • 自家用車での通院のガソリン代や駐車場代
  • 医師の指示によらない差額ベッド代
  • 美容整形
  • 里帰り出産の交通費
節子

補足ですが、人間ドックなどの健康診断で異常が見つかった場合は対象となります。

つか夫

何が対象になるのか、事前に確認しておいた方が良さそうだね。

節子

そうですね。

(医療費控除の対象について、詳しくは国税庁のこちらのページをご参考ください。)

 

2.医療費控除額の計算方法

医療費控除 計算

節子

医療費控除額の計算方法は、このようになっています。

医療費控除額=(医療費控除の対象になる年間の医療費の合計額-保険金等で補てんされた金額)-10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額等×5%)

つか夫

あれ。
年間の医療費が10万円を超えていれば、その分だけ戻ってくるんじゃないの?

節子

実は、出産育児一時金や高額療養費、保険金などによって支給された金額は、合計の医療費から差し引いて計算しなくてはなりません。
その上で、年間に支払った医療費が10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額等×5%)を超えた場合に、お金が戻ってきます。
そして良く勘違いされますが、超えた金額がすべて戻ってくるわけではないんですよ。計算して出された医療費控除額に所得税率をかけた金額が戻ってくるんです。

つか夫

所得税率って、総所得にその率をかけて所得税を出すっていうあれ?

節子

そうです。その所得税率です。そしてこちらが各所得に応じた所得税率となっています。

 

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円~330万円以下 10%
330万円~695万円以下 20%
695万円~900万円以下 23%
900万円~1,800万円以下 33%
1,800円~4,000万円以下 40%

 

節子

例えば、年収が400万円の人が年間で30万円の医療費を支払ったとしましょう。
そうすると、

(30万円‐10万円)×20%=4万円

となり、4万円が戻ってくるんですよ。

つか夫

なるほど。10万円を超えればその分が戻ってくるってわけじゃないんだね。

節子

はい、その通りです!
もしも出産育児一時金や高額療養費、保険金などが支給されていた場合は、そちらの金額を引いてから計算するのを忘れないでくださいね。

(出産育児一時金についての詳しい内容は、「42万円の支給?出産費用の平均と出産育児一時金について」をご参考ください。)

3.医療費控除の申請方法

医療費控除 申請方法

節子

医療費控除は、自分で申請しないとお金を受け取ることができません。
年末調整では手続きできないため、注意してください。

まずは必要になる書類を揃えましょう。
以下の書類が申請に必要です。

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票
  • 領収書
  • 医療費の明細書
つか夫

確定申告書は税務署に取りに行けばいいんだよね。
それか、郵送でも取り寄せられたはず。

節子

はい。
または、国税庁のe-Taxと呼ばれるシステムを使い、プリントアウトすることもできますよ。

源泉徴収票と医療機関が発行する領収書は、必ず原本が必用ですので、手元に残しておきたい場合はコピーを取っておくことをおすすめします。

つか夫

なるほど。
病院でもらった領収書が必要なのは、このためなんだね。

節子

そうですね。
ですから、これからはしっかりと領収書を保存しておいてくださいよ?

つか夫

了解っす!

節子

もう、返事だけはいいんですから……。
ちなみに、通院の際に、領収書の発行が難しい電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合は、日付や金額、利用の目的と人数をメモしておいてくださいね。
その内容を医療費の明細書に記載すれば、申請することができますので。
医療費の明細書は確定申告書と同じように、税務署から入手するか国税庁のこちらのページでプリントアウトできますよ。

つか夫

了解っす!!

節子

本当に大丈夫かな……。

つか夫

それで、これらの書類を揃えたらどうすればいいの?

節子

これらの書類を揃えましたら、管轄の税務署に提出してください。
医療費控除の申請は、還付申告というものにあたるので、翌年の1月1日から5年の間に行うことができますよ。

4.まとめ

  • 医療費控除の申請をすると、年間の医療費の合計で10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額等×5%)を超えた分に、所得税率をかけた金額を受け取ることができる
  • 医療費控除では、生計を一にしている家族の医療費も合算して申請できる
  • 医療費控除額=(医療費控除の対象になる年間の医療費の合計額-保険金等で補てんされた金額)-10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額等×5%)
  • 医療費控除は、確定申告書・源泉徴収票・領収書・医療費の明細書を税務署に提出して申請する
節子

医療費って、自分が思っている以上に年間でかかっていることがあります。
一度の金額自体が少なくとも、何度も病院へ行っていれば大きな出費になりますからね。
家族の分を合わせると、尚更です。
なので、そういった場合には、医療費控除をうまく使い、超過分の税金を払い戻してもらいましょうね。

つか夫

健康優良児の僕でも、年に2、3回は病院へ行くからね。
節子の医療費と合わせて申請できるように、これからはしっかりと領収書を管理するよ!
なんなら、1人でも10万円にいくように何かしらの怪我を……!

節子

それだと本末転倒ですよ、つか夫さん……!

節子

やっぱり大丈夫じゃなさそう……。