自動車保険の特約おすすめ一覧!新車特約から弁護士特約まで徹底解説

自動車保険は身近な存在ですが、様々な要素が組み合わさって出来ているため複雑でわかりにくいですよね。

その補償内容について良く理解しないまま入っているという方が多いのも無理もないことなのかもしれません。

特に特約の種類が多いのが自動車保険の特徴なので、その意味を知ることは自動車保険を理解するうえでとても重要です。そこで自動車保険の主な特約について詳しく解説いたします。

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自動車保険の特約とは?

自動車保険の特約は、自動車にたとえるならオプション装備。

自動車を買う時に付けるオプション装備を選ぶように、自動車保険の特約も必要なものをしっかりと選びたいものです。また特約には補償を付け加えるだけでなく補償を減らす特約もあります。

自動車保険に求めるものは契約者それぞれ異なります。不足している補償があれば特約を足し、不要な補償は特約で減らしていくことが出来ます。そのためには、特約の内容をよく理解している事が必要です。

自分や同乗者の身体の補償をする特約

人(ひと)保険といわれる保険があります。

保険のなかで人間を対象にした保険という意味です。自動車保険は人保険と物(もの)保険が組み合わさって出来た保険です。人保険の特約のうち、自分や同乗者の身体の補償をする特約は「人身傷害補償保険」と「搭乗者傷害保険」の2種類があります。

搭乗者傷害保険

「搭乗者傷害保険」は怪我などが原因で死亡した場合や、後遺障害が残ってしまった時、入院や通院による怪我の治療などに対して、決められた保険金を受け取ることが出来る特約です。

「通院1日当たり5千円、入院1日当たり1万円」のように治療内容にかかわらず支払われる定額給付が特徴で、保険金額は契約時に任意で決められますのでシンプルでわかりやすいのが特徴です。

人身傷害補償保険

「人身傷害補償保険」は治療費の他にも、仕事を休まなければならなかった期間の所得補償や、万が一お亡くなりになってしまった場合の逸失利益なども補償の対象となります。

実損填補型の補償ですから実際に治療にかかった費用や、仕事を休んだ事による休業損害の実費などが支払われるため、被保険者が受けた経済的不利益を合理的に補償できる手厚い補償になります。

搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険のちがいは何?

「搭乗者傷害保険」は契約の時に指定した自動車に乗っている時に起きた事故によって死亡してしまったり怪我を負ってしまった場合のみ保険が効くのですが、「人身傷害補償保険」は被保険者が他の自動車に搭乗中の事故でも補償するような設定が可能な場合もあります。

「人身傷害保険」は搭乗者傷害保険の後から生まれた比較的新しい特約で、必要以上に大きな保険になってしまったり、逆に補償が不足してしまったりしにくいだけでなく、補償が大きい場合でも、「搭乗者傷害保険」より保険料が上がりにくい実損填補型補償が特徴になっています。そのため「搭乗者傷害保険」は販売を縮小して「人身傷害保険」を中心に販売している保険会社が増えています。総合的に判断すると「人身傷害保険」の商品力の方が高く、契約者にとっても有利と言えるでしょう。

 無保険車傷害保険特約

事故の相手が無保険車だった時の為の特約です。

「無保険車傷害保険」は、相手が自動車保険に入っていない無保険車の事故などで死亡した場合やその時の怪我などが原因で後遺障害が残ってしまった時に、本来なら事故の相手から相手の保険で賄われるべき補償を受けられないときに、自分の自動車保険から支払いを受けられる特約です。

自動車保険には自賠責保険という強制保険と任意保険があり、任意保険は自賠責保険の上乗せとして加入するという前提で保険金は支払われます。相手が入っているはずの強制保険に相手が入っていないと、制度上そこに空白が生まれてしまうため、契約者が経済的な不利益を受けることを防ぐための特約です。

事故の相手や労災などから受け取ったり、支払われることが決まったお金があるときは、その差額が支払われます。ほとんどの自動車保険に自動的に付帯される特約なので特に申し込む必要はありませんが、法人契約所やフリート契約(複数一括契約)の場合は特約を外すこともできます。自動付帯の保険なので契約者はその存在を意識することはまずないと思われますが、保険に入っていない人の賠償責任まで負う自動車保険は、非常に重い社会的責任を担っていることがわかります。

また、相手が無保険車の場合、この特約があっても、受けられる補償が減ってしまうことに変わりはありませんから、自分自身への補償もおろそかにはできません。無保険車傷害保険特約はあくまで人保険で、物損は対象外なので、車両保険など物保険の備えも万全にしておきたいところです。

自損事故傷害特約

自賠責保険が支払われないときの為の特約です。

「自損事故傷害」は、自損事故で自動車保険契約自動車の保有者、運転者、搭乗中の方が死亡したり、怪我をしたりした場合、自賠責保険などで保険金が支払われないときに、1回の事故につき被保険者1名ごとに、所定の保険金を支払われます。

自動車保険のうち任意保険は強制保険である自賠責保険の上乗せの保険という位置づけです。しかし自賠責保険は賠償責任がある事故でしか支払われません。電柱との衝突など、加害者のいない自損事故では、自動車の保有者すなわち自賠責保険の契約者自身が死亡したり、ケガをしたりした場合でも自賠責保険は支払われません。賠償とは他人の損害を補償するものという大前提があるため、自分で自分に賠償することはできないため自賠責保険は支払われないのです。そのため自賠責保険が支払われないと任意の自動車保険では不足が生じてしまいます。

ややこしいですが、自賠責保険は自分自身の補償には使えないため、普通なら支払われる自賠責保険の保険金相当額が支払われる特約が「自損事故傷害」です。ほとんどの自動車保険に自動的に付帯されるので特に申し込む必要はありません。万が一の時の手続きもすべて保険会社が行ってくれるので意識する必要もありません。

無保険車傷害保険特約同様ほとんど契約者が意識することはない特約ですが、このようなきめ細かい仕組みつくりの結果安心して自動車を運転できる社会が出来ている事は知っておきましょう。

人身傷害入院時諸費用特約

事故による入院時の思わぬ出費に備える特約です。

自動車保険契約自動車搭乗中の事故により、入院したり重い障害が残った場合に必要なさまざまな費用を実費で補償するのが人身傷害保険である事はご説明いたしました。その人身傷害保険の支払い対象となる事故でありながら、支払いの対象に含まれない費用もあります。そんな人身傷害保険では補償できない種類の費用を、保険会社が定める範囲で支払ってくれるのが「人身傷害諸費用特約」です。

けがで入院すると治療費以外にも様々な費用が必要になります。家事や介護、育児またはペットの世話など、人身傷害保険では補償できない様な費用等を補償する特約になります。人身傷害はかなり手厚い補償のある特約ですが、「人身傷害入院時諸費用」はさらにその上を行く補償であり、被保険者が入院してしまって家事や介護、育児またはペットの世話などができなくなってしまった場合に保険金が支払われます。

費用は、家事や介護や育児を代わりにしてもらうためのヘルパー代・ベビーシッター代・保育施設の利用料はもちろん、犬か猫に限りますがペットのお世話の代行をお願いした費用や専門の施設にペットを預かってもらう費用、そして無事退院できた時はお礼の品物や退院祝いの宴席費用まで補償の対象になります。

専業主婦の方が万一入院してしまうと、ご家族は大変な思いをされますし、一人暮らしの方で自分が入院したら愛犬の世話を頼める人がいないという方は少なくないでしょう。退院時のお礼にかかる費用まで補償されていて至れり尽くせりです。

人身傷害死亡・後遺障害定額給付金特約

事故で死亡または重い障害が残った時の為の特約です。

「人身傷害死亡・後遺障害定額給付金」は自動車保険の人身傷害保険の保険金が支払われる事故で、被保険者がお亡くなりになってしまった時や後遺症が残ってしまった時に受け取ることが出来る給付金です。お亡くなりになってしまった時は保険金額の全額が給付されます。後遺症が残ってしまった時には、残ってしまった後遺症に応じて死亡保険金の4~100%が受け取れる保険会社が多いです。

既に後遺障害定額給付金を受け取っている被保険者が死亡した場合は、死亡定額給付金との差額を受け取ることが出来ます。また、他の保険契約等で既に支払われた保険金がある場合は、その額を差し引いた保険金が支払われます。他の特約の組み合わせによってはこの特約を付帯すること自体出来ないことがあります。

「人身傷害死亡・後遺障害定額給付金」は、合理的な保険金算出の人身傷害保険の死亡保障部分をより手厚くするための特約で、人身傷害保険は怪我による入院などはすごく手厚いので、死亡保障もグレードアップしたいという方にお勧めの特約です。人身傷害保険は万が一の時の補償として実際に必要な治療費を実費で補償したりする合理的な保険ですが、事故が起こるまではいくら支払われるのかわからないので、契約者にとってはわかりにくく感じる保険といえるかもしれません。

保険に入ったといっても「保険金はいくらかけてるの?」と聞かれて明確に答えられないので、納得して入った保険でも「分かっていない」ような気になってしまいます。「人身傷害死亡・後遺障害定額給付金」は保険金1000万円の補償を特約として追加したなら「1000万円の補償を付けた」と即答できる分かりやすさが魅力ともいえます。また、人身傷害保険は扶養家族の人数や年齢構成により死亡保険金が低くなってしまうも有る為、定額補償で上乗せしておくのは安心感があります。

搭乗者傷害特約

搭乗者傷害特約は自動車事故による死亡やケガを補償する特約です。

自動車保険の契約自動車に搭乗中の方が自動車事故により死亡した場合や怪我をした場合、1回の事故につき被保険者1名ごとに、死亡保険金・後遺障害保険金・医療保険金が支払われます。

医療保険金は一時金払いと日数払いの2種類の給付方法があり、保険会社や保険種類により異なります。人身傷害保険の登場までは「搭乗者傷害保険」が主流でしたが、現在は人身傷害保険(特約)が主流になっていて「搭乗者傷害保険」が選べない自動車保険も現れています。人身傷害死亡・後遺障害定額給付金特約のところでご説明した通り、人身傷害保険は支払われる保険金の額がその時になってみないとわからないので、分かりにくい保険と思われがちですが、「搭乗者傷害保険」は「死亡1000万円入院1万円通院5000円」という風にわかりやすいのが特徴です。

人身傷害保険を付帯していれば、治療費など経済的な損失は防げるはずですが、さらに上乗せして「搭乗者傷害保険」を付帯することでわかりやすい安心感を得ることが出来ます。

「搭乗者傷害保険」には、わかりやすい反面、保険料が高くなりがちという欠点があります。入院通院の日額は死亡保険金額に比例するので、入院通院の補償を充実させたいと思うと死保険金も上げなければならず、入院保障だけを充実させたいというニーズにこたえられません。そのため結果的に保険料が高くなりがちなので、付帯する場合は主契約とのバランスを考える必要があります。

自分や相手の車の補償をする特約

物(もの)保険といわれる保険があります。

「自分や同乗者の身体の補償をする特約」のところで説明した人(ひと)保険に対して、「自分や相手の車の補償をする特約」は物(もの)保険といえるでしょう。

自動車保険の主契約のうち自分の車を補償するのは車両保険、相手の車の補償をするのは対物保険で、契約者のニーズに合わせて様々な特約が用意されています。例えば車両保険は、ほとんどの事故で支払いが可能なフルカバータイプの一般車両保険が基本ですが、「車対車+A」や「エコノミー車両保険」と呼ばれる特約を付け、車同士の事故と盗難などに支払われる事故を限定することで保険料を安くすることも可能です。

 車両新価保険特約(新車特約)

大事故が起きれば新車に買い替える前提の特約です。

車両新価保険特約(新車特約)は自動車保険の契約自動車が全損になった場合、または修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合、実際にかかる自動車の再取得費用または修理費について、新車価格相当額を限度に支払います。

まだ新しい車が大きな事故で多額の修理代がかかるような場合、一般の車両保険の主契約では同年式の中古車の時価を基準に保険金が決められます。「車両新価保険」はその車両保険金額と新車価格相当額との差額部分をカバーするというものです。

買って1年くらいではまだまだピカピカです。万が一買ったばかりの車で大きな事故を起こしてしまったら、事故車としてずっと乗り続けるのは気が重いですよね。ましてやもらい事故で壊されてしまったら、新車に買い替えて欲しいと思うのは当然だと思います。

またせっかく新車に乗っていたのに、事故で修理不能になってしまったために同程度の中古車に乗ることになったとしたらどうでしょうか?「どのような扱われ方をしたのか分からない中古車に乗るのは嫌」という方も多いでしょう。

そんな時役に立つのが「車両新価保険」です。新車ではなく中古車にもこの特約を付帯することができますが、付帯には様々な条件があり、保険会社により条件は異なります。チェックポイントは、新車登録から何か月までこの特約を付帯できるかという点でしょう。新車登録から11か月から61か月までと保険会社によって期間はバラバラですが、その期間であれば中古車で買った車でも新車特約を付けることが出来ます。ただ、あまり古い車に「車両新価保険」を付けても同型の新車がすでに手に入らないと意味がないですから、その点注意が必要です。

車が全損になってしまったり、修理費が新車価格相当額の50%以上となってしまったりするような、そんな大事故は滅多にありませんが、万一の時の経済的負担と精神的負担はかなり大きなものになります。さらに相手のある事故の場合相手が良い人ばかりとは限りません。相手が保険に入っていなかったり過失割合で揉めたりすると修理に取り掛かることさえできないなんてことも起こりうるのが自動車事故の怖いところです。「車両新価保険」を付帯していれば、相手にかかわらず条件さえそろえば新車に乗り始めるという事さえできるかもしれません。

「車を買う時はいつも新車という方」「買い替えの時車のグレードを落としたくない方」「万一の事故の時、あれこれ揉めたくない方」にお勧めの特約です。

車両全損修理時特約

同じ車に長く乗り続けたい人のための特約です。

「車両全損修理時特約」は自動車保険の車両保険金の支払いを受けられる事故で、契約時に決めた保険金額より修理代の方が高くなってしまった場合に、保険金額と修理代の差額分の保険金を出してもらえます。

車両保険の保険金額は同等の自動車の新車または中古車の再調達価格を基準としています。年式が古い車や価格が低い車では大きな事故の時の修理代が再調達価格を上回ってしまうことが珍しくありません。

例えば、購入価格100万円(税・諸費用別)の中古車が1年後の市場価格が80万円の場合、保険金額は80万円が適正です。この車両で修理代90万円の事故が発生してしまった場合、80万円で中古車を買った方が安いので、修理せずに中古車に買い替えてもらうというのが自動車保険による補償方法となっています。

このように自動車保険を掛けた車を修理しない事を全損といいます。しかし、愛着がある車を買い替えではなく修理して長く乗りたい、珍しい車なので同型の中古車が手に入らない、ということはよくある事です。その時は車両全損修理時特約が最適です。特約保険金額や支払い条件は保険会社によりますが、初度登録年月から25ヶ月超の場合付帯できる会社が多いようです。

車両新価保険でも修理代がオーバーした時に、新車に買い替えるか新車の市場販売価格を上限として修理することが可能ですが、こちらの方は50万円程度を超過額の限度と決められている保険会社が多く、その分、保険料が抑えられています。車両新価保険はあくまで買い替えメインの特約なので、修理メインで考えればこちらがお勧めです。

自然災害特約

自然災害に備える特約もあります。

自動車保険の車両保険は車同士の事故や単独事故だけでなく火災や台風などが原因の事故も補償の対象になります。台風、竜巻、洪水、高潮は一般車両保険はもちろん、単独事故や当て逃げが不担保のエコノミー車両保険でも保証されます。ただし、地震・噴火・津波は同じ自然災害でも不担保になっていて、地震・噴火・津波車両全損時一時金特約を付帯することで損害発生時には一時金を受け取ることができます。

台風で浸水してしまうと、車両が全損してしまうこともあります。水につかってしまうとエンジンが壊れてしまうだけでなく、車内に臭いがついてしまって、そのままでは乗れなくなってしまうのです。災害はいつどこで起きるかわかりませんので車両保険は必ず付帯したいですね。

地震・噴火・津波に関しては被害が甚大になりやすいため基本的に損害保険は不担保になっています。地震・噴火・津波車両全損時一時金特約は、地震・噴火・津波で車両が全損になった場合、一時金として50万円が支払われます。

故障運搬時車両損害特約

故障運搬時車両損害特約はレッカー代を補償してくれる特約です。

故障運搬時車両損害特約は契約自動車が故障により走れなくなってしまってレッカー車などで牽引された時、その費用などを受け取ることが出来ます。無料のロードサービスが自動車保険にはついている事が多いのですが、無料の範囲を超える長距離のレッカー移動や転落などでクレーン作業が発生したときなど、ロードサービス費用が高額になったときに役立ちます。補償内容や保険金額は保険会社により異なりますが、無料のロードサービスはレッカー代が無料になる距離が短く、ロングドライブが多い方はこちらで備えた方が安心です。

車両の脱落でクレーンが出動というと海や山のイメージですが、一見ちょっとした脱輪に見えてジャッキが入らずクレーン作業が必要になるケースは都市部でも発生します。お世話になりたくないものですが、万が一に備えるのが保険の役目なので検討の価値がある補償です。

代車特約

契約自動車が事故によって代車が必要になった場合に必要な費用を補償する特約です。

保険会社によって補償内容は異なりますが、1日当たりの補償額の上限を定めて実際にかかった費用を補償する会社が多いようです。代車は修理工場で無料で借りられる事も多いのですが、無料なだけに車種が選べないことも多いので確実に代車を確保したい方向けの補償です。

事故修理の代車でレンタカーを車種指定で要求というと贅沢とかわがままとか勘違いされそうですが、例えば「体の不自由な高齢者を病院に通院させるために乗り降りしやすい車でないと困る」という事情で屋根が高くて床が低い車を指定されることは珍しくありません。修理工場に都合よくそういう代車が空いているとは限らないので、やむを得ずレンタカーとなるわけです。高級車を指定するわけでないのであれば保険金額を低めに設定することもできますし、そうすれば保険料の負担も低減できます。

対物全損時修理差額費用特約

これは事故の相手への思いやりといっても良いでしょう。

「対物全損時修理差額費用」は対物事故で相手の車の修理費が時価額を上回り、その差額を被保険者が負担した場合に保険金を支払います。「車両全損修理時」の対物版ともいえる特約で、相手が時価額を上回る金額の修理を希望した場合、特約なしでは支払えません。

古くても愛着のある車だから直して乗りたい、という事ことはよくあります。中には保険で足りない部分は自腹で修理するという人もいます。例えば市場価格が50万円の車両は、修理代が50万円を超えた時点で保険的には全損扱いですから、修理代が60万円でも80万円でも50万円しか支払いません。しかし、「対物全損時修理差額費用」を付帯していれば時価額50万円を超えた部分を支払うことが出きます。差額の上限は50万円程度の保険会社が多いようです。

法律的には保証する必要はないかもしれませんが、こちらにも非がある事故で相手に申し訳ないと思うような事も有るかもしれません。事故の相手と揉めるのが嫌いな方にはお勧めです。

その他の補償特約

自動車保険に付帯できるそのほかの特約についてまとめました。自動車保険は普及率が高い保険なので利用者の利便性を高めるために幅広い特約が用意されています。自動車保険はどこの保険会社で加入してもサービス内容も保険料も同じという時代もありましたが、1996年の保険自由化以降は保険会社独自色の強いものも登場するようになっています。

他車運転特約

自動車を借りるリスクを軽減する特約です。

他車運転特約(他車運転危険補償特約)は自動車保険の被保険者が、第三者の車を借りて運転した際に起こした事故を、契約自動車の事故とみなして、契約内容に応じて補償します。借りた車が自動車保険に加入していた場合でもこの特約で優先して支払いが可能です。対人・対物・搭乗者・車両保険まで契約の範囲内で使用可能です。

友人の車を借りたり、友人の車でロングドライブして運転を交代しながら走っていた時に事故を起こしてしまったというのは良くある話です。友人は友人で自動車保険に入ってるとは思いますが、友人の保険を使ってしまうと来年から保険料が高くなってしまい気まずいですよね。他車運転特約(他車運転危険補償特約)をつけることで安心してドライブできるようになります。

弁護士特約

示談交渉サービスが使えないもらい事故で活躍します。

自動車保険には事故の時の示談交渉サービスがありますが、もらい事故に限って使えません。そこでもらい事故の時でも専門家に示談交渉をお願いできるのが「弁護士特約(弁護士費用特約)」です。

ほとんどの自動車保険には示談交渉サービスがついています。これは保険会社の担当者が事故の相手との示談交渉を契約者に代わって行ってくれるサービスです。示談交渉は素人には難しく相手との話し合いも煩わしいものですからありがたいサービスなのですが、契約者側に落ち度のない「もらい事故」では使えません。

弁護士法は非弁行為(弁護士や弁護士法人でないものが、報酬を得る目的で法律事務を行うこと)を禁じています。交通事故の示談交渉は法律事務であり、保険会社は契約者から保険料という形で間接的に法律事務の報酬を得ているとも言えるため、保険会社が示談交渉行うことは弁護士法に抵触してしまいます。その為1970年代の前半までは保険会社は示談交渉サービスを行っていませんでした。

しかし、些細な事故までいちいち弁護士を立てるか自分で示談するしかないのでは契約者にとって大変不便です。当時の日本は自家用自動車の保有台数が急激に増えている時代でしたから尚更でした。そこで損害保険会社の業界団体である日本損害保険協会は弁護士会に対し、保険会社による示談交渉を認めるように要求しました。

「示談交渉の結果、被害者に賠償金を支払うのは契約者ではなく保険会社である。従って保険会社は契約者に代行して示談交渉を行っているのではなく、保険会社自身の法律事務として行っているのであって非弁行為にあたらない」という主張が認められ、1973年に弁護士会と日本損害保険協会との間で覚書が交わされ、保険会社が契約者に代わって示談の話し合いをする事が認められるようになりました。

「被害者に賠償金を支払うのは契約者ではなく保険会社」という理屈で勝ち取った示談交渉サービスですから、保険会社が示談交渉できるのは「対人賠償責任保険」または「対物賠償責任保険」の2種類です。そして契約者に落ち度の無い「もらい事故」の場合は被害者側の保険会社が支払う必要が無いいため保険会社が示談交渉サービスを行うことができないのです。

「弁護士費用特約」の補償内容は保険会社によって異なりますが、自動車事故専用の「弁護士費用特約」のほかに、自動車事故だけでなく日常生活における事故で被害者になった場合にも、怪我や車・モノの損害に対する賠償請求を弁護士に委任する際の弁護士費用を補償する「日常生活弁護士費用特約」というものもあります。

「弁護士費用特約」は利用しても翌年の保険料に影響しませんので、もらい事故の場合は遠慮なく使いましょう

自転車特約

自転車特約は自動車保険につけられる自転車保険です。

記名被保険者と配偶者または同居の親族および別居の未婚の子が、自転車で転倒して本人が死んでしまったり怪我をしてしまった時や、道を歩いているときに他人が乗っている自転車に衝突されてしまい自分が怪我をして入院してしまった時などに保険金が受け取れます。

自分が怪我するより「万が一自転車で人と衝突してけがをさせてしまったら困る」という相手への賠償問題を気にする方の方が多いかもしれません。最近高額な賠償事故が話題になった問題でもあります。そういう方は個人賠償責任保険特約が最適です。

「個人賠償責任特約」は日本国内、国外を問わず、記名被保険者(契約時に主な運転者として登録した人)、その配偶者またはこれらの方の同居の親族・別居の未婚の子が日常生活における偶然な事故により、他人に怪我などを負わせてしまった時や他人の財物を破壊してしまった時に、法律上の損害賠償責任の額について、保険金を支払う特約です。

「子供が自転車で歩行者と衝突して怪我をさせてしまった」場合も、被害者の治療費、慰謝料、休業損害などが保険金支払いの対象となります。補償内容、賠償金の上限などは保険会社によって異なりますが、示談交渉サービスが付帯した会社もあります。

家族特約

運転者を限定する事で保険料を割引きする特約です。

家族特約(運転者家族限定特約)は契約自動車を家族に限定する特約で、ここでいう家族とは記名被保険者とその配偶者、その同居の親族、その別居の未婚の子となります。それ以外の人が運転中に起こした事故については保険金が支払われません。

運転者を限定するだけで保険料が安くなり人気でしたが、2019年1月から大手損保会社で運転者家族限定を廃止する動きがありました。同様の特約に「本人限定」や「本人・配偶者限定」があります。

ファミリーバイク特約

割安でバイクに保険を掛けられる特約です。

ファミリーバイク特約は、自動車保険の記名被保険者(契約時に主な運転者として登録した人)と、その配偶者またはこれらの方の同居の親族・別居の未婚の子がファミリーバイク(原動機付自転車)を使用中などに生じた事故を補償する特約です。

運転者限定特約および運転者年齢条件特約は適用されませんから、「自動車とバイク両方を所有している人」はもちろん「家族共用のバイクがある方」などは、1台1台に専用の自動車保険をかけるより、自動車保険の特約で補償した方が安上がりです。他人に借りたバイクも補償の対象となりますので、お子さんが免許を取って、友達から借りた原動機付自転車で事故を起こしてしまった、という時でも大丈夫です。

主契約の対人・対物保険がファミリーバイクにも適用されるのですが、車両保険に加入していてもファミリーバイクの車体に生じた損害には保険金は支払われません。運転者の補償は主契約とは別に設定され、保険会社によって異なりますが、人身傷害型と自損傷害型が選択できる事が多いようです。治療にかかる費用の実費が補償される人身傷害型は安心感が高いです。事故が大けがにつながりやすいバイクでは怪我の補償をおろそかにできませんので、主契約同様に十分な補償を付けたいところです。補償は保険会社により異なりますので事前に必ずご比較検討しましょう。

この特約の良さが最も発揮されるのは「子供が原動機付自転車の免許を取ったばかり」というご家庭でしょう。親の自動車保険にこの特約を付ければ運転者限定と運転者年齢条件が適用されません。親が35歳以上で運転者を夫婦限定にしていても16歳のお子様に保険を掛けることができます。若いうちは保険料が高いので本人名義で専用の自動車保険に加入するより安くなります。大学の近くで一人暮らしをしているお子様でも補償の対象です。

※この特約が使えるファミリーバイク(原動機付自転車)とは、125cc以下の原動機(エンジン)を備えた側車のない小型自動二輪車の事です。

ドライブレコーダー特約

ドライブレコーダー特約はドライブレコーダーを使って様々なサービスを提供する特約です。

ドライブレコーダーで提供されるサービスは保険会社によって異なりますが、事故発生をドライブレコーダーが検知すると自動車保険会社に自動的に画像を送信するなどの対応を自動で行うなどのサービスがあるようです。先進的な機能を持つドライブレコーダーを保険会社から650~850円でレンタルしてもらえるようです。ドライブレコーダーを付けようか検討している方は、どうせつけるなら保険とセットでいかがでしょうか?

「ドライブレコーダーによる運転診断機能」など各社それぞれ独自のサービスを打ち出していますし、これから参入する保険会社が増えそうな分野です。

自動車保険は大きな潮目に

2019年1月に、自動車保険の保険料や補償内容が大きく変わりました。損害保険業界としては2010年4月の保険法改正以来の大きな動きとなりました。運転者家族限定を廃止する大手保険会社が出るなど、価格で勝負の時代は終わりドライブレコーダー特約に代表される高付加価値の時代が来たようです。今後どんな特約が現れるのか、引き続きチェックしたいと思います。

東 千秋
ガジェットと車が大好きなWebライター。これまでに買ったスマホはXperia中心に100台以上。所有する車は維持費が高額なことで有名なマツダRX-7(FD3S)。格安SIMや光回線などの自宅Wi-Fiの他、自動車保険などの車の維持費についても実体験を交えてわかりやすくお伝えします。
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