死亡するまで一生涯の保障が続く終身保険。この保険、月々の保険料が高い代わりに、総合して支払う金額が掛け捨てよりも安くなっていることをご存知でしょうか? 今回は、そういったメリット・デメリットを解説した上で、終身保険がおすすめな人を紹介します。
うーん、なんだかよくわからないなぁ。
1.終身保険とは?
終身保険とは、保険期間が一生涯続く生命保険のことです。解約をしない限り死亡保障が無くなりませんので、家族は必ず死亡保険金を受け取ることができます。
定期保険のような掛け捨て型とは違い、支払った保険料がどんどん貯まっていく「貯蓄の性質」を持っているのが大きな特徴ですね。
はい。終身保険は、解約したら支払った保険料が「解約返戻金」として戻ってくるんですよ。定期保険にこの機能はありません。なので、貯金ができる保険とも呼ばれています。
2.終身保険のメリット
2-1死亡保障が一生涯続く
終身保険では、保険料の払込が終わってもそのまま死亡保障が続きます。世界に誇れる長寿国の日本で、死亡保障が一生涯続くのは大きなメリットと言えますね。
日本人の平均寿命は男性が80.50歳、女性が86.83歳で、その歳以上に生きる人の平均余命は約9年というデータが出ています。つまり、男性は89歳、女性は95歳まで生きる可能性が高いわけですね。
ここまで長生きする人が多い中、保障が一生涯続くのはとても安心できますし、支払った保険料をムダにしないで済ますことができます。
2-2.支払った金額以上の解約返戻金が満期時に受け取れる
終身保険の解約返戻金は、満期を迎えると支払った保険料の総額を超えます。商品にもよりますが、満期時の解約返戻率は105~120%と銀行の利率よりも断然お得になっています。
仮に、解約返戻率が120%で65歳まで700万円の保険料を支払った場合、満期時に受け取れる解約返戻金の金額は840万円です。140万円のプラスになりますね。
2-3.保険料が変わらない
保険料が変わらないのも終身保険の大きなメリットです。
掛け捨て型の定期保険だと更新(だいたい10年に一回)の度に保険料が大幅に上がってしまうため、急に家計の負担が大きくなってしまいます。
(※定期保険でも全期払いという、最初から最後まで保険料が変わらない支払い方を選択できますが、多くの人は月々の料金が安く見える更新型を選んでいます)
終身保険にはそもそも更新がないので、そういった心配をすることはありません。加えて、保険料が上がらないというのは、総合して支払う金額も安くなるメリットがあります。
例えば、とある30歳の男性が1,000万円の死亡保障の付いた生命保険に加入して、平均寿命の80歳で亡くなったとします。
〈定期保険〉 | ||
保険料 | 10年間分 | |
30歳 | 2,510円 | 301,200円 |
40歳 | 3,840円 | 460,800円 |
50歳 | 7,370円 | 884,400円 |
60歳 | 15,440円 | 1,852,800円 |
70歳 | 38,320円 | 4,598,400円 |
合計保険料:8,097,600円 | ||
解約返戻金:なし |
〈終身保険〉 | ||
保険料 | 65歳までの合計保険料 | |
30歳 | 16,520円 | 6938,400円 |
合計保険料:6938,400円 | ||
解約返戻金(解約返戻率115%):7,979,160円 |
合計保険料を比較してみると、更新をしている定期保険の方が高いことがわかりますね?その差はおよそ116万円です。
加えて、終身保険では解約して解約返戻金を受け取ることもできます。子どもが独立して、家族にお金を残す必要性が低くなったら、解約返戻金を老後資金に活用できますよ。
3.終身保険のデメリット
3-1.月々の保険料が高い
終身保険のデメリットは、月々の保険料が定期保険や収入保障保険よりも比較的高いことです。これは終身保険に、一生涯の保障や貯金という機能が付いているからですね。
保険のシミュレーション(見積もり)を行うとすぐにわかりますが、加入する年齢が30歳である場合、死亡保障が1,000万円の終身保険はだいたい月々に15,000~20,000円ほど支払うことになります。
一方で、同じ条件の定期保険なら1,500~3,000円ほどです。収入保障保険でも2,000円前後ですね。やはり月々の負担で考えた時、保険料の高さが終身保険のデメリットになります。
3-2.元本割れする可能性がある
終身保険は、満期前に解約してしまうと元本割れを起こしてしまいます。支払った保険料よりも受け取る解約返戻金が安くなってしまうんです。
三井住友海上あいおい生命のとある終身保険では、解約返戻率が以下のように推移します。
加入者は30歳の男性で、死亡保険金が1,000万円の終身保険
経過年数(年) | 年齢(歳) | 解約返戻率 |
5 | 35 | 58.3% |
10 | 40 | 64.1% |
15 | 45 | 65.9% |
20 | 50 | 67.7% |
25 | 55 | 69.5% |
30 | 60 | 71.6% |
31 | 61 | 103.1% |
35 | 65 | 106.4% |
40 | 70 | 110.5% |
保険料の支払いが終わる60歳までは、100%を下回る利率になっていることがわかりますね? この時点までに解約してしまうと、支払った保険料の元が取れません。加入して5年で解約してしまえば、解約返戻金は支払った保険料の約半分になってしまいます。
4.終身保険がおすすめな人
では、どのような人が、どのような目的で終身保険を使うと効果的なのでしょうか。
終身保険がおすすめな人を詳しく見ていきましょう。
4-1.解約返戻金で老後資金を作りたい人
死亡保障を確保しながら、同時に老後資金を形成したい人に終身保険は向いています。これは、終身保険に貯蓄の性質があり、満期を過ぎてから解約返戻金としてまとまった金額を確保できるためですね。
子どもが小さいうちは死亡保障として考え、子どもが独立して大きな保障が不要になったら解約返戻金を老後の資金に充てるんです。そうすれば、支払った保険料をムダにすることなく、家族や自分のために活用できます。
30歳男性が、65歳まで終身保険に入っていた場合 死亡保障額:1,000万円 |
この例でいうと、65歳の時点で7,184,268円のお金が貯まっています。支払った保険料よりも、約100万円増えていますね。解約時を70歳まで伸ばし、保険会社にお金を運用させる手もありでしょう。
確かに、満期を過ぎてから解約すれば、解約返戻金をそのまま老後資金に充てられて、支払った保険料はムダにならないね。
あくまでも死亡保障なので、解約する前に亡くなれば、もちろん1,000万円の死亡保険金が受け取れます。
なので、パートナーとの老後を見据えつつ、保障をしっかりかけておきたい人に終身保険はおすすめなのです。ただし、満期を迎える前に解約してしまうと元本割れを起こしますので、その点には注意してくださいね。
4-2.葬儀にかかる費用を準備しておきたい人
葬儀代の準備には終身保険が向いていると言われています。
日本消費者協会による「葬儀についてのアンケート調査」の結果では、葬儀費用の平均額はおよそ200万円でした。墓地使用料や墓石台を加えると、だいたい300~500万円になっていきます。
いつ亡くなるかわからない中、これだけ貯金を残すのは簡単ではありませんよね。だからこそ、金額の一部をカバーするのに生涯に渡って保障される終身保険が適しているんです。終身保険で葬儀費用を準備すると、支払った保険料よりも大きな死亡保険金を受け取れるメリットもありますよ。
ちなみに、定期保険や養老保険では保障期間に定めがあるので、葬儀代の準備には不向きです。
30歳男性が、65歳まで終身保険に入っていた場合 死亡保障額:300万円 |
この場合でいうと、300万円の葬儀費用をおよそ180万円でカバーしたことになりますね。
4-3.相続税の対策で保険を活用したい人
生命保険の死亡保険金には非課税枠があるので、終身保険は相続税の対策にも有効です。
終身保険は保障が一生涯だから、いつ亡くなっても対策できるってことか。
その通り。生命保険の非課税枠は、【500万円×法定相続人の数】です。
4-4.子どもの学費を貯めたい人
終身保険は、学資保険としての使い方も有効です。
30歳男性が、生まれた子供の大学費用を終身保険で用意した場合 死亡保障額:500万円 |
この場合、子どもが18歳になった時点で約336万円の教育資金を準備できます。支払った保険料がおよそ315万円なので、21万円を利率で生み出したことになります。
加えて、万が一死亡した場合であっても500万円がすぐに支払われますので、学費に利用することができますね。
銀行で貯金するよりも利率が良く、死亡保障が付いた貯め方になるので、学資保険として終身保険を利用するのはおすすめです。
もしも収入が増えた関係などで学費を別途用意することができたのなら、そのまま60歳まで運用して子どもの結婚資金や自身の老後資金などに転用する手もありますね。
4-5.生命保険料控除と高利率を活かして貯金したい人
終身保険を、生命保険料控除と高利率の恩恵を活かしつつ、貯金に使う方法もあります。
生命保険料控除とは、支払った保険料に応じて所得税や住民税が軽減される制度のことですね。要は、保険で貯金をすると税金が安くなるんですよ。
30歳男性が、貯金目的で終身保険を利用した場合 死亡保障額:1,000万円 |
月々の保険料は口座から必ず引かれますので、貯金が苦手な方には強制力がかかってちょうど良いかもしれませんね。
ただし、満期前に解約してしまうと元本割れが起こるので、それまではお金を使わない前提が必要です。すぐに動かせる貯金ではないので、どのような用途で使うのかを明確にしておいた方が良いでしょう。
また、利率で増えた金額が50万円を超えると、一時所得の控除額を超えて課税対象になってしまいます。一時所得の課税はあくまでも一年間の範囲になりますので、年度を分けて解約したり、年金払いで受け取ったり、課税されない対策をしないといけません。
これらの点を留意した上で、利用を検討しましょう。
5.終身保険をおすすめできない人
今度は終身保険をおすすめできない人について見ていきましょう。
5-1.保険料の支払いに不安が残る人
終身保険は、定期保険と比較して月々の保険料が5~10倍近く高くなります。65歳払済にすれば、それまで毎月この高い金額を払い続けなければなりません。
なので、保険料のせいで家計が強く圧迫されてしまったり、支払いに不安が残ったりする人にはおすすめできません。
もしも満期を迎えない段階で解約してしまったら、それこそ大きな損をしてしまいますし、何よりも今の生活がままならないようでは本末転倒です。
一般的に、収入に占める保険料の割合は3~10%と言われています。終身保険に支払う月々の保険料が10%を超える場合は、死亡保険金の額を見直すか、定期保険の利用を検討した方が良いでしょう。
5-2.大きな保障金を用意したい人
終身保険は、死亡保障金の金額で保険料が大きく変わります。
30歳男性が定期保険・終身保険に加入した場合の月々の保険料
死亡保険金額 | 定期保険 | 終身保険 | |
10年満了 | 65歳満了 | 65歳満了 | |
1,000万円 | 1,830円 | 3,110円 | 16,200円 |
1,500万円 | 2,745円 | 4,665円 | 24,300円 |
2,000万円 | 3,280円 | 5,840円 | 32,400円 |
2,500万円 | 4,100円 | 7,300円 | 40,500円 |
3,000万円 | 4,920円 | 8,760円 | 48,600円 |
3,500万円 | 5,740円 | 10,220円 | 56,700円 |
4,000万円 | 6,560円 | 11,680円 | 64,800円 |
5,000万円 | 7,700円 | 14,100円 | 81,000円 |
※10年満了の定期保険は10年ごとに更新が必要となり、その際に保険料が大幅に高くなります
このように、大きな死亡保障金を付けようとすると、終身保険では月々の負担が重くなりすぎてしまいます。そのため、大きな保障金を求める人には向いていません。
少なくも、3,000万円を超える死亡保障金が欲しいなら、定期保険の併用を考えた方が良いですね。
5-3.保障を短い期間だけ付けたい人
子どもが小さくてお金がかかる時期や給料が少ない20~30代の間といった、短い期間にだけ保障を付けたい人にも、終身保険は向いていません。大概、こういった期間は何かとお金が必要になる時期なので、毎月高い保険料を支払っている余裕もないと思います。
短期間に集中して保障を付けるのなら、月々の保険料も安い定期保険が最適ですね。
あくまでも終身保険は一生涯の保障がメリットになる保険商品です。目的や用途に応じた利用を考えなければいけません。
6.まとめ
- 終身保険のメリット
- 死亡保障が一生涯
- 満期時に支払った金額以上の解約返戻金が受け取れる
- 保険料が変わらない
- 終身保険のデメリット
- 月々の保険料が高い
- 満期前に解約すると元本割れを起こす
- 終身保険がおすすめな人
- 老後の資金を貯めたい人
- 葬儀費用にお金を残したい人
- 相続税対策に利用したい人
- 学費を貯めたい人
- 保険で貯金を作りたい人
最終的に支払う金額が定期保険より安かったり、老後資金や相続税対策に活用できたりと、終身保険はただ月々の保険料が高いだけじゃないんですよ。
でもあれだね、やっぱり一番魅力的なのは保障が一生涯続くことだね。
僕、「一生涯」って言葉好きだなぁ。なんかこう、男らしさを感じる。
「一生涯、お前を守ってやる」みたいな?