妊娠・出産に携わる場面では、多くの公的制度が利用できることをご存知ですか?
妊婦検診費や入院・分娩費など負担額は大きいですが、出産にかかる費用を経済的に支援してくれる公的制度もたくさんあり、うまく活用すれば負担額を大幅に軽減することができます。
今回はそんな公的制度についてのお話です。
出産にかかる費用ってどのくらい?
同僚が出産にかかる費用について頭を抱えていたんだけど、負担額が大きいからだったんだね。
では、その同僚さんにお伝えください。
公的制度を利用することによって受給できるお金もたくさんありますよ、と。
知りたいですか?
目次
1.妊娠・出産は基本的に健康保険が効かない
何らかのトラブルが発生して医療処置が必要になった場合などは、健康保険が適用されます。
例えば、
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ですが、健康保険が適用されるかどうかは医師が様々な基準から判断するため、吸引分娩などは産院によって健康保険の対象にならない場合もあります。
てっきり、出産には健康保険が適用されるものだと思い込んでいたよ。
でもそうなると、分娩にかかる費用や入院費は全部自己負担に……?
そうならないために、公的制度があるのです!
2.妊娠・出産の費用を節約する8の公的制度
2-1. 自治体が費用を負担する「妊婦健診費の助成金」
一般的に、出産までに14回ほど検診するとされ、費用の合計は約10万円と言われています。
妊婦検診には健康保険が適用されませんが、自治体が妊婦検診の費用を負担してくれます。
母子手帳と同時に妊婦健康診査の受診票(補助券と呼ばれるものです)が交付されるので、検診を受ける病院に提出します。
そうすることで、自治体が負担する金額が差し引かれ、差額が出ればそれを病院の窓口で支払う形になります。
自治体によって負担金額は違ってくるのかな?
全額負担の自治体もあれば、一部のみ負担の自治体もありますので、受診票を交付される際に確認しておく必要がありますね。
2-2.42万円の支給が出る「出産育児一時金」
出産育児一時金は、生まれた子ども1人につき42万円が支給される制度のことです。
1人につきってことは、双子だった場合は2人分が支給されるの?
ただし、健康保険に加入しているか被扶養者の状態であり、妊娠4ヶ月(85日)以上で出産することが条件となっています。
なので、分娩・入院費用が42万円より安く済んだ場合、差額を保険機関に申請すると
差額分を受け取ることができます。
この制度は絶対に活用したいね!
出産育児一時金についてはこちら
2-3.給与の3分の2が貰える「出産手当金」
その期間の生活を支えるために健康保険から支給されるのが、出産手当金にあたります。
仕事を継続していて、勤務先の健康保険に加入していれば大丈夫です。
出産手当金が支給される期間は産前42日+産後56日となっており、出産予定日が遅れた場合は、出産予定日前42日+予定日から出産日までの日数+産後56日となっています。
また、多胎妊娠の場合は産前42日が98日と長くなります。
気になる点は、1日につきいくら支給されるかだね。
つまり、月の給与を30日で割り、その金額の3分の2を産休日数分かけた金額にあたります。
出産手当金を受け取るためには、健康保険出産手当金支給申請書という申請用紙を会社もしくは会社を管轄する社会保険事務所から受け取る必要があります。
その申請用紙に、医師から必要事項を記入してもらい、会社または社会保険事務所に提出すれば完了です。
書類に間違いがなければ、およそ2~3週間後に振り込まれますよ。
2-4.長期間適用される「育児休業給付金」
育児休業、いわゆる育休の間に経済的な支援を受けられる制度ですね。
支給される金額は、育児休業開始から180日間までが通常賃金の67%、それ以降は50%です。
何日間まで支給されるの?
保育所が満員で入所待ちなどの特別な事情がある場合は、1歳6か月まで期間が延長されることもありますよ。
ですので、育児休業給付金は長期間に渡って支給される制度となっています。
女性は出産日当日から育児休業に入ることが出来ますが、男性の場合は出産日から8週間が経たないといけません。
この点に注意してくださいね。
2-5.帝王切開時に利用したい「高額療養費」
それが高額療養費制度です。
例えば?
例えば、重い病気で長期間入院したりしますと、いくら医療費の自己負担が3割とはいえ、支払う金額は高くなりますよね?
このような場合に、高額療養費制度は個人の負担を軽減してくれます。
ただし、健康保険の対象となる治療で、個人の負担が一定金額(自己負担限度額)を超えることが条件となっています。
でも出産には健康保険は適用されないんじゃなかったっけ?
ですが、切迫早産や切迫流産、帝王切開による分娩は基本的に健康保険の対象となります。
帝王切開による分娩は、通常の分娩よりも医療費が高くなり、なおかつ健康保険の対象となっているので、高額療養費制度を是非利用しましょう。
高額療養費制度についてはこちら
2-6.確定申告でお金が戻る「医療費控除」
妊婦検診費や分娩のための入院費、通院のための交通費に処方薬代といったものも医療費控除の対象となります。
ただし、医療費控除の対象となった金額が、出産育児一時金や保険金によって支給された金額を差し引いた後でも10万円を超えていなければお金は戻ってきません。
例えば、年間で医療費控除の対象金額が45万円だったとしても、出産育児一時金の42万円が支給されていれば、医療費控除の対象金額は3万円となり、お金を受け取ることができません。
2-7.妊娠悪阻などの場合に貰える「傷病手当金」
病気や怪我の療養のため、連続して3日間休み、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
連続して休みを取った3日間は、対象外となります。
妊娠中ですと、つわり(妊娠悪阻)などによって長く会社を休むことがあるかと思います。
その際の入院や自宅療養期間が、傷病手当金の対象となります。
傷病手当金のことは知っていたけど、妊娠中でも対象になるんだね。
ここで注意しなくてはならないことが2つあります。
傷病手当金は、勤めている会社の健康保険に加入していることが条件なのですが、国民健康保険は対象外となります。
また、傷病手当金の支給は、休業した期間に給与の支払いがない場合に限られるため、産休中の出産手当金などと重複して受け取ることはできません。
支給される期間と金額はどうなっているの?
金額は出産手当金と同じで、標準報酬日額の3分の2×休みを取った日数です。
ただし、連続して休みを取った3日間は、カウントされません。
2-8.過払い分が戻る「所得税還付申告」
所得税は1年間会社に務めることを前提にした金額を、月の給与から天引きをしているため、1年間勤めなければ過払い分が発生します。
出産や妊娠によって年度の途中で退職した場合、その過払い分を請求することできるのです。
年度の途中で退職してしまうと、年末調整ができないですからね。
過払い分の所得税は、確定申告により戻ってきます。
3.まとめ
- 妊娠・出産は基本的に健康保険が適用されない
- 自治体から妊婦検診費を負担してもらえる
- 子ども1人につき42万円の出産育児一時金が支給される
- 産休中は出産手当金が支給される
- 育児休業の期間中は育児休業給付金が支給される
- 高額な医療費を支払った場合、健康保険から払い戻しを受けられる
- 年間10万円以上の医療費には、医療費控除が適用される
- 妊娠悪阻などで会社を休んだ場合、傷病手当金が支給される
- 妊娠・出産で退職した場合、所得税の過払い分が戻ることがある
負担金額が大きい分、しっかりと公的制度を利用しましょうね。
これだけの公的制度があれば、経済的な負担はかなりなくなるんじゃないかな。
ありがとね、節子。
利用の際には、条件をよく確認するようにとお伝えください。
あ、そうだ。
もしも節子がお腹に命を授かったら、僕は全力で君をサポートするからね。
有給休暇も育休も、全部使うつもりだから安心してよ。