将来、介護が必要となった時に受けられる保障として、介護保険制度があります。この介護保険制度には、どのような種類があり、どのような場合に、どのような保障を受けることができるのか、詳しく確認して見ましょう。
僕らがおじいちゃんおばあちゃんになったらさ、もしかしたら介護が必要になるかもしれないよね。
その時って、どんな保障があるのかな?
つか夫さんが老後のことについて考えているなんて。
脂っこい物とかなんとなく食べられなくなってきたような。
このままどんどんと老けていったら、僕も介護が必要になる時が来るのかなぁ、なんて考えちゃって。
そうですね、私たちが将来介護を受けるようになったとしても、介護保険制度がありますから、それなりに保障はされますよ。
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目次
1.介護保険制度について
介護保険制度とは一言でいうと、介護を必要とする人を社会全体で支える仕組みのことですね。介護が必要になった人が、福祉・医療の介護サービスを受ける時に費用を負担してもらえるものです。
これからどんどん高齢者が増えていく中、少子化や核家族化が進んでいる現代の状況で、家族だけで介護を支えることは難しいといわれています。なので、介護が必要となっても皆が安心して生活できるように、社会全体で介護を支える仕組みとして介護保険制度ができたんです。
介護保険に加入している人が保険料を支払い、介護が必要となった時に費用を負担してもらえれば、いざという時に対処することができますからね。
その通りです。介護保険にも色々と種類やルールがあるので、それらについて詳しく見ていきましょうか。
2.介護保険の種類
介護保険にも種類があります。といっても大きく分けて、個人が任意で加入する民間の介護保険と、ある一定の歳になったら強制的に加入される公的介護保険の2種類しかありませんが。
民間の介護保険は企業によって様々なものがあり、個人の状況に応じて加入するべきでしょう。ただ、公的介護保険には必ず入ることになるので、こちらの保険について知っておき、それでも保障が足りないと感じた場合に個人で介護保険に加入する、とした方が良いですね。公的介護保険でも色々な介護サービスの費用を負担してくれますので、それで保障が足りることもありますから。
まずは公的な保険がどこまで保障してくれるのかを知っておかないとね。
そうですね。公的介護保険の場合に保障される内容を知っておかなければ、追加して入る民間の介護保険でどのようなものを選べばいいのか迷ってしまいますからね。
ということで、ここからは介護保険でも、公的介護保険に着目して、詳しく見ていきます。
3.介護保険の対象者
介護保険で保障を受けられる対象者は、こちら。
- 65歳以上の人
- 40~65歳未満で、医療保険に加入している人
65歳以上の人の場合、介護や支援が必要となれば介護保険の保障を受けることができます。
ですが、40~65歳未満の人の場合、老化が原因とされる病気によって介護や支援が必要になった時にしか、保障を受けることができません。この病気のことを特定疾病と呼びます。
介護保険が適用となる特定疾病は以下の16種類です。
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脳血管疾患
- 後縦靭帯骨化症
- 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 閉塞性動脈硬化症
- 多系統萎縮症
- 慢性関節リウマチ
- 初老期における認知症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
- 早老症
- 末期がん
4.介護保険では、どういった介護サービスが受けられるの?
では、どのような介護サービスに介護保険の保障は適用されるのでしょうか。
具体的には、以下のような介護サービスについて保障を受けることができます。
- 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
- 自宅で受けられる家事援助等のサービス
- 施設などに出かけて日帰りで行うデイサービス
- 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
- 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
- 福祉用具の利用にかかるサービス
1つずつ詳しく見ていきましょう。
4-1.介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
介護サービスを利用する前には、利用者の状況や要望に応じてどのような生活を送っていきたいのかを決めます。それによって利用するサービスの種類や頻度を決めるわけですが、その計画書のことをケアプランと呼びます。
ケアプランの作成には、居宅介護支援事業所などのケアマネジャーに相談することが多いのですが、その際に費用が発生します。その費用を介護保険が負担してくれるというわけですね。
要は、介護サービスを受けるために必要な事前準備にかかる費用を負担してくれるわけだね。
その通りです。介護サービスをこれから利用する人が、今どの程度のことをできるのか、どの程度のことができないのか、どういったサービスを受けていきたいのかなど、こういった情報を事前に確認するためには、知識を持った専門家が相談に乗る必要がありますからね。
相談といっても、ケアプランを作成するのには多くの労力が必要です。そこに費用が生じてしまうのは仕方のないことです。介護保険は、この段階でかかる費用についても保障してくれというわけです。
4-2.自宅で受けられる家事援助等のサービス
自宅に来てもらい、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助をしてもらうサービスは介護保険の適用対象になります。具体的には、訪問介護や訪問看護、訪問リハビリテーションなどのサービスが当てはまりますね。
こういったサービスを利用する時は、介護保険によって費用が負担されます。
4-3.施設などに出かけて日帰りで行うデイサービス
デイサービスと呼ばれる、介護施設などに通い、日常生活上の支援や生活機能向上のための機能訓練を受けるサービスも、介護保険によって費用が負担されます。
デイサービスは、引きこもりや孤独を解消し、介護をする家族の負担を減らすことができるため、多くの人が利用しています。こういった日帰りで施設に行き、介護サービスを受けるものも、介護保険の対象になるんです。
4-4.施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設で介護サービスを受ける場合、介護保険によって費用を負担してもらうことができます。要は、老人ホームや介護療養型の医療施設などでの介護サービスが介護保険の適用対象になるというわけですね。
施設などに宿泊する介護サービスは、他の介護サービスに比べて費用が高くなりがちです。必ず介護保険を利用したいですね。
4-5.訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
訪問・通い・宿泊を組み合わせた複合型サービスの場合であっても、介護保険は適用されます。可能な限り自立した日常を送ることができるよう、施設への通いを中心に宿泊や訪問を合わせてサービスを提供する小規模多機能型居宅介護などが当てはまりますね。
4-6.福祉用具の利用にかかるサービス
腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部品・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具の部品などの購入費用が介護保険によって負担されます。
こういった福祉用具は通常で購入すると値段が高いです。介護保険を利用すると、支給限度額は10万円の範囲内となってはいますが、1割の自己負担で済みます。
介護に福祉道具が必要なのであれば、ぜひ介護保険を利用しましょう。
5.実際に介護サービスを受けるには?
介護保険の保障は、介護サービスを利用した際の費用を負担してくれるものです。介護サービスを利用している人が、介護保険の保障を受けられるというわけなのですが、そもそも介護サービスを利用するためには、「要介護認定」を受け、介護が必要なのかどうかを判断してもらわなければいけません。
この要介護認定がどういったものかを、実際に介護サービスを受けるために必要な流れを見ながら確認していきましょう。
5-1.要介護認定の申請
要介護認定とは、その人の介護が必要な度合いに応じて、「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に区分するものです。この要介護認定の度合いに応じて、介護サービスが受けられたり、受けられなかったりしてきます。
介護がある程度必要って認められないと、介護保険の保障を受ける以前の問題として、そもそも介護サービスを利用できないってわけなんだね。
その通りです。その人に介護がどの程度必要なのかによって、受ける介護サービスの内容も変わってきますからね。
介護施設によっては、少し介護が必要な人を対象にしているところもあれば、がっつりと介護が必要な人のみを対象にしているところもあります。この要介護認定の基準によって、受け入れられるかどうかを判断しているわけです。
ちなみに、要介護認定の区分はこのようになっています。
要介護度 | 認定の目安 |
要支援1 | 障害のために生活機能の一部に若干の低下が認められ、介護予防サービスを提供すれば改善が見込まれる。 |
要支援2 | 障害のために生活機能の一部に低下が認められ、介護予防サービスを提供すれば改善が見込まれる。 |
要介護1 | 身の回りの世話に見守りや手助けが必要。立ち上がり・歩行等で支えが必要。 |
要介護2 | 身の回りの世話全般に見守りや手助けが必要。立ち上がり・歩行等で支えが必要。排泄や食事で見守りや手助けが必要。 |
要介護3 | 身の回りの世話や立ち上がりが一人ではできない。排泄等で全般的な介助が必要。 |
要介護4 | 日常生活を営む機能がかなり低下しており、全面的な介助が必要な場合が多い。問題行動や理解低下も。 |
要介護5 | 日常生活を営む機能が著しく低下しており、全面的な介助が必要。多くの問題行動や全般的な理解低下も。 |
要介護5に近づくほど、介護がより必要になってくるわけですね。この要介護認定を受けるには、住んでいる市区町村の窓口にて申請しなければなりません。
5-2.かかりつけの主治医や指定医院で認定調査を受ける
要介護認定の申請をしたら、今度は実際にどの程度介護が必要なのかの認定調査を受けますかかりつけの主治医や指定医院がこの認定調査を行ってくれますよ。
要介護認定の申請を行った市区町村が依頼をしてくれますよ。
5-3.介護が必要かどうか?審査判定
認定調査をもとに、審査の判決が進められます。
5-4.介護サービス認定
審査が通ると、認定の通知が市区町村から届きます。申請してから結果が届くまで、およそ1か月ほどです。
ここで、要介護認定の区分のどれかに振り分けられるんです。
5-5.介護サービスの計画書作成
要介護認定がなされれば、いよいよ介護サービスを受けるために介護サービス計画書を作成します。先ほど述べたケアプランのことですね。
ケアプラン作成にかかる費用は保障の対象となるので、ぜひ介護保険を利用しましょう。
6.実際に負担される介護サービスの金額
では、実際に介護保険は介護サービスにかかる費用を、どの程度負担してくれるのでしょうか。つか夫さん、どれくらいだと思います?
半分くらい、かな?
残念ながら違います。
正解は、原則として介護サービスにかかる費用の9割です。
つまり、自己負担が1割になるということですね。
ほとんど全部じゃないか!それはすごい!
ただ、あらかじめ限度額が決められているので、それを超えてしまった分は自己負担になってしまいますけどね。
限度額は、介護サービスの種類や要介護認定の区分などによって異なります。
例えば、自宅に来てくれる訪問介護などの居宅サービスの場合、限度額は以下の通りです。
要介護度 | 支給限度額 |
要支援1 | 50,030円 |
要支援2 | 104,730円 |
要介護1 | 166,920円 |
要介護2 | 196,160円 |
要介護3 | 269,310円 |
要介護4 | 308,060円 |
要介護5 | 360,650円 |
7.介護保険に加入するにはどうしたらいい?
次は介護保険の加入について見ていきましょう。つか夫さん、介護保険の保険料はまだ支払っていないと最初にいいましたよね?
あ、もしかしてまだ僕らは介護保険に加入していないってこと?
正解です。介護保険は40歳になってから加入するんですよ。私たちが40歳になると、加入している公的医療保険(会社を通じて入っている健康保険や国民健康保険など)から介護保険料が上乗せされるんです。
40歳になればほぼ自動的に介護保険に加入されるので、特にこれといった手続きはありませんよ。
8.介護保険料はいくら収めるの?
では、40歳になって介護保険に加入したら、いくら保険料を納めなくてはいけないのか。
介護保険料の決まり方は加入している公的医療保険や年齢、住んでいる市区町村などによって変わります。主に40~65歳未満と65歳以上の視点に分けると分かりやすいで、そちらでそれぞれ見ていきましょうか。
8-1.40~65歳未満の介護保険料
40~65歳未満の場合、先ほども述べましたが加入している公的医療保険から保険料が請求されます。なので、加入している公的医療保険によって保険料が異なってきます。
会社を通じて加入する健康保険の場合
協会けんぽが運営している健康保険に加入している場合、介護保険料は全国一律で1.58%です。会社を通じて加入する健康保険の場合、勤めている会社と折半して保険料を支払うため、介護保険料も同じように、個人での負担としては半分の0.79%となります。
例えば、月の給料が40万円の場合。
400,000円×0.79%=3,160円 となり、月の介護保険料は3,160円 |
国民健康保険の場合
{(所得-330,000円)×〇%+〇〇円}÷12か月
という計算になり、この〇に当てはまる数値が自治体によって異なってきます。
例えば、東京都江戸川区の場合は、
{(所得-330,000円)×1.44%+14,700円}÷12か月
という式になるので、所得が400万円であれば、
{(4,000,000円-330,000円)×1.44%+14,700円}÷12か月=5,629円
となり、月に換算した保険料は5,629円ですね。
ちなみに、330,000円は基礎控除額、14,700円は均等割額を示しています。
船員保険の場合
介護保険料率は1.68%で、こちらも会社と折半となりますので個人の負担は0.84%です。
例えば、月の給料が40万円の場合。
400,000円×0.84%=3,360円 となり、月の介護保険料は3,360円 |
共済保険の場合
共済保険の場合は、加入している組合によって介護保険料率が異なります。
公立学校共済組合の場合は、1.084%です。学校と折半しますので、個人の負担は0.542%です。
例えば、月の給料が40万円の場合。
400,000円×0.542%=2,168円 となり、月の介護保険料は2,168円 |
8-2.65歳以上の介護保険料
65歳以上の介護保険料は、住んでいる市区町村によって決まります。
例えば東京都江戸川区の場合は、以下の表の通りに保険料が決められています。
所得段階別保険料年額(平成28年度) |
||||
所得段階 |
対象者 | 保険料率 |
保険料(年額) |
|
住民税非課税者 | 第1段階 |
・生活保護受給者の方 ・老齢福祉年金受給者の方で、世帯全員が住民税非課税の方 ・世帯全員が住民税非課税で、公的年金等収入額及び合計所得金額の合計額が80万円以下の方 |
基準額×0.50 ↓ 基準額×0.45 ※公費投入(0.05) |
26,460円 |
第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で、公的年金等収入額及び合計所得金額の合計額が80万円を超えて120万円以下の方 | 基準額×0.75 |
44,100円 |
|
第3段階 | 世帯全員が住民税非課税で、公的年金等収入額及び合計所得金額の合計額が120万円を超える方 | 基準額×0.75 |
44,100円 |
|
第4段階 | 住民税課税者がいる世帯で、本人が住民税非課税で公的年金等収入額および合計所得金額の合計額が80万円以下の方 | 基準額×0.90 |
52,920円 |
|
第5段階 | 住民税課税者がいる世帯で、本人が住民税非課税で公的年金等収入額及び合計所得金額の合計額が80万円を超える方 | 基 準 額 |
58,800円 |
|
住民税課税者 | 第6段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が120万円未満の方 | 基準額×1.20 |
70,560円 |
第7段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が120万円以上190万円未満の方 | 基準額×1.30 |
76,440円 |
|
第8段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が190万円以上290万円未満の方 | 基準額×1.50 |
88,200円 |
|
第9段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が290万円以上400万円未満の方 | 基準額×1.60 |
94,080円 |
|
第10段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が400万円以上500万円未満の方 | 基準額×1.75 |
102,900円 |
|
第11段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が500万円以上700万円未満の方 | 基準額×1.90 |
111,720円 |
|
第12段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が700万円以上900万円未満の方 | 基準額×2.10 |
123,480円 |
|
第13段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が900万円以上1,200万円未満の方 | 基準額×2.30 |
135,240円 |
|
第14段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が1,200万円以上2,000万円未満の方 | 基準額×2.50 |
147,000円 |
|
第15段階 | 本人が住民税課税者で、合計所得金額が2,000万円以上の方 | 基準額×2.70 |
158,760円 |
この表を参考にして、具体例を挙げてみましょう。
家族構成:夫(65歳)、妻(65歳)の2人家族 住まい:東京都江戸川区 所得:夫が400万円、妻が70万円 所得税:夫は課税者、妻は非課税者この場合、夫は第10段階、妻は第4段階に当てはまります。なので、介護保険料は、夫:102,900円(年間) 妻:52,920円(年間) 2人:102,900円+52,920円=155,820円(年間)となります。 |
夫:8,575円(月)
妻:4,410円(月)
2人:8,575円+4,410円=12,985円(月)
だね。
9.まとめ
- 介護保険制度とは、介護が必要な人が介護サービスを受ける時に費用を負担してもらえるもの
- 介護保険には、公的介護保険と民間の介護保険の2種類がある
- 介護保険では、以下のような介護サービスについて保障を受けられる
- 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
- 自宅で受けられる家事援助等のサービス
- 施設などに出かけて日帰りで行うデイサービス
- 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
- 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
- 福祉用具の利用にかかるサービス
- 介護サービスを受けるには、要介護認定を申請しなければならない
- 40歳以上になると、自動的に介護保険に加入することになる
- 介護保険料は、加入している公的医療保険や年齢、住んでいる市区町村などによって変わる
それよりも私たちの両親に介護を必要となることの方が年齢的に早いでしょう。