支払う期間が一生涯な代わりに、月々の保険料が安い終身払込。年齢が上がっても毎月の保険料が変わらないため、一見してお得に見えます。しかし、見えにくいところで保険料に関するさまざまなデメリットが……。
まぁ、ほとんど仕事の話しかしなかったけどねー。
給料が上がらないってみんなで嘆いてたよ。
なんでも、月々の保険料がめちゃくちゃ安いらしいよ。
うちも保険料安くするために終身払込にしよーよ!
終身払込って高いんですもん。
だから渋々保険に入ったって言ってたし。
安く見えるだけです。
ちょっと説明しますね。
目次
1.そもそも終身払込とは?
終身払込とは、保険料を一生涯支払い続ける代わりに、毎月の料金が安くなる支払い方のことです。月々の保険料はずっと変わらないので、いつまでも安い料金で支払えるという特徴があります。
保険料の支払い方は数多く、10年の間で支払い終える10年払済や65歳までに支払い終える65歳払済などがあります。期間や年齢をもとにしている支払い方ですね。その他にも、一括ですべて支払う全額一時払といったものもあります。
例えば、誰かから借りた100万円を5回で支払おうとすると1回は20万円になりますよね?10回で支払おうとするなら1回10万円です。それと同じで、保険も支払う期間が短くなるほど、月々の保険料は高くなるんですよ。
なので、支払う期間が最も長くなる終身払込は、他の支払い方よりも月々の保険料が安くなります。
そうですね、確かに月々の保険料は安いです。
そして、そうやって保険料が安く思えてしまうことこそ、この終身払込における落とし罠でもあるんです。
2.「保険料が一生変わりません」は悪魔のささやき?終身払込の落とし罠とは?
月々の保険料が安いというのは魅力的ですよね。誰だって月々の出費は減らしたいものですから。
でもちょっと考えてみてください。その安い保険料、いったいいつまで支払うんですか?
ええ、終身払込は一生涯保険料を支払うわけですから、もちろん死ぬまでですよね。では、いったい何歳で死ぬんですか?
日本人の平均寿命は、2014年の段階で男性が80.50歳、女性が86.83歳です。女性の平均寿命は世界で一番となっていますね。これからも医療の発展でさらに平均寿命は増えていくでしょう。
平均寿命である歳になったからといって、そこでパタッと死んでしまうわけではありません。平均寿命にさらに平均余命を足した年齢までは、生きている可能性が高いわけですね。
平均寿命からの平均余命は、日本人の男性で約9年、女性だと約8年となっています。つまり、男性は約89歳、女性は約95歳まで生きられる可能性があるわけです。さすが長寿の国、日本ですね。
終身払込で89歳や95歳までの一生涯、保険料を支払うのは、本当に安いことなんですか?
そんなのただの可能性じゃないか!
そうです、もちろんただの可能性です。不慮な事故や病気でそれよりも早く死んでしまう可能性だってあります。
ただ、これはれっきとしたデータです。日本では、平均してこれだけ生きられるという事実が出ているんです。決して無視して良い可能性ではないでしょう。
こういった事実を加味した上で考えると、「保険料が一生変わりません」という、いかにもお得ですよといったこの言葉は、悪魔のささやきのように思えてきますね。
3.65歳払済と終身払込では支払う保険料にどれだけ差がある?
日本人が長生きすることがわかったところで、肝心の保険料について考えてみましょうか。65歳払済と終身払込では、支払う保険料の合計にどれだけの差が出るのか、例を通して見ていきます。
【65歳まで保険料を支払って、一生涯1000万円の死亡保障が付くケース】 保険:終身保険 20,160円×12か月×30年間=7,257,600円 合計保険料……7,257,600円 |
【死ぬまで保険料を支払って、一生涯1000万円の死亡保障が付くケース】 保険:終身保険 15,290円×12か月×54年間=9,907,920円 合計保険料……9,907,920円 |
合計保険料の差は2,650,320円ですね。つまり、終身払込だと約265万円も多く保険料を支払うことになるんですよ。
もちろん、加入する保険商品や保険内容によって金額は異なってきますが、それでもこれほどの差が出てくることは事実です。
月々の保険料は安くても、最終的に支払う金額は高い。安く見えて実は高いというのは、まさしくこのことですね。
更新型ではない支払い方なら、終身払込と同じように保険料が変わることはありません。一生涯保険料を支払うわけではないので、「一生涯保険料は変わらない」というわけではないですけどね。払い終わるまでの期間で保険料が変わらなければ十分でしょう?
また、65歳払済ですと、65歳から解約返戻金が支払った保険料よりも高くなります。ですが、終身払込だと、いつまで経っても解約返戻金が元本割れするままのケースがほとんどです。85歳や90歳の段階でも、まだ98%しかないなんてことが多いんです。どの段階で解約しても、元本割れで損してしまうんですよ。
それに、定年退職を迎え、年金暮らしになっても毎月の保険料を支払わなければいけないので、いつまで経っても肩の荷が降りません。その上、終身払込で解約返戻金がない掛け捨ての場合、保険料を2ヶ月滞納すると、保障自体が失効してしまいます。万が一お金を工面できない状況になってしまったら、それまで支払ってきた保険料がムダになってしまいます。
一生涯、必ず保険料を支払い続けるというのは、思っている以上に辛いことですよ。
4.すでに終身払込で保険に加入している場合
終身払込は、加入した年齢時の保険料を死ぬまで払い続ける方法です。保険料が安いので、他の保険と料金を比べてしまい、見直しをしない人が多いようですね。
今現在、加入している保険に終身払込のものがあったら、今まで支払った保険料のことを割り切り、別の支払い方法や保険を検討した方が良いかもしれません。
このような言い方は不謹慎ですが、平均寿命よりも早く死ぬだろうと考えている人や、年金生活になっても保険料はハンデじゃない収入の方は、わざわざ変更する必要はないでしょう。それに、見直す年齢によっては、すでに手遅れな場合もありますので……。
願わくば、早い段階で終身払込の実態に気づき、個人に合った対処をできるような人が増えればいいなと思います。
老後に必要な資金は1,000万円や2,000万円では足りないといわれている世の中だからこそ、余計な出費を作らないように心がけ、幸せな第二の人生を歩みたいものです。
5.まとめ
- 終身払込とは、保険料を一生涯支払い続ける代わりに毎月の料金が安くなる支払い方
- 終身保険は、月々の保険料は安いが、トータルで支払う保険料が高くなる
- 65歳払済と終身払込では、支払う合計保険料に約250万円以上の差がある
- ※35歳の男性が、死亡保障1,000万円の死亡保険に加入した場合
- ※保険商品によって合計保険料の差は異なる
- 終身払込の保険に加入している場合、早い段階で見直しを検討すべき
安い保険料にばかり目が行っちゃうと、こういうデメリットに気づきにくくなるんだね。
保険に加入する際は、必ず支払う保険料の合計を電卓で計算することをおすすめします。
そうして比較すると、今回のように氷山の本体を見つけることができますよ。
言いえて妙だね。
はっ、早く友達にこのことを教えてあげなきゃ!