雇用保険制度は、失業した人が再就職するのを金銭的に援助してくれる保険です。そこで気になるのが、支給される金額とそのための条件。それらを知るために、今回は雇用保険制度の仕組みについて詳しく解説していきます。
いや、上げてほしくないわけじゃないけど。
それで、何かあったんですか?
今週、同僚が2人会社をやめるんだ。1人は自己都合なんだけど、もう1人がリストラみたいなものでさ。
今、職を失ったらどうすればいいんだろうって考えちゃって。
まぁ、他の就職先を探さないといけませんよねぇ……。
雇用保険でいくらか援助されますし、それをもとに頑張るしか、って感じです。
失業したら、お金がもらえるやつだよね?
失業したからもらえる、というわけではありません。
ちょっと、雇用保険について詳しく。
僕にも無縁なものじゃないかもしれないし。
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目次
1.雇用保険とは?
そもそも雇用保険制度とは、失業した労働者に必要な給付を行い、労働者の生活や雇用の安定を図るとともに再就職を援助することを目的としたものです。要は、失業した人が再就職するのを金銭的に援助してくれる保険ってことですね。
雇用保険の給付にはいくつか種類がありますが、一般的に利用されているものは失業給付ですね。失業給付は失業手当ともいいます。失業給付は、会社を辞めてから次の就職先が見つかるまでの期間を、金銭的に援助してくれるものとなっています。離職してから受け取れる給付ですので、職を失って収入がなくても、再就職のための活動資金を確保できますよ。
1-1.雇用保険に加入するには?
基本的に、労働者を1人でも雇っていれば、会社は雇用保険を適用しなければなりません。そして、雇用保険を適用している会社に勤めている以上は、雇用保険に加入しなければいけません。
はい、その通りです。雇用保険に加入するためには、ハローワークに加入の手続きをしなければいけませんが、それは会社がやることになっていますので、私たちが加入に際して特に何かをすることはありません。つまり、会社に勤めていれば自動的に雇用保険に加入ということになるんです。
ちなみに、会社が雇用保険の加入手続きをちゃんと行ってくれているのか心配でしたら、ハローワークに問い合わせてみてください。簡単に確認することができますよ。
1-2.雇用保険(失業保険)はパートやアルバイトでも加入できる
以下の条件に当てはまれば、パートやアルバイトでも雇用保険に加入することができます。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
10日間だけの短期のアルバイトや、週に10時間ほどしか働いていない状況だと、雇用保険に加入することは難しいですね。ただ、パートやアルバイトはシフトによって週の労働時間が変わってきますから、実働労働時間ではなく、契約書に記載されている週の労働時間から判断されます。実際に毎週20時間以上働けていなくても、契約書で週の労働時間が20時間以上というような内容になっていれば、雇用保険の加入条件をクリアできますよ。
2.雇用保険はいくら収める?
2-1.雇用保険料の保険料率
というか正直なことをいうと、雇用保険の保険料って今までに支払った記憶がないんだけど……。
大丈夫です、つか夫さんはちゃんと保険料を支払っていますよ。雇用保険の保険料は、毎月給料から天引きされていますので。気になる料金は、平成28年度から給料の0.4%となっています。
ただ、雇用保険の保険料は事業によって異なります。農林水産・清酒製造の事業や建設の事業の場合は、給料の0.5%となっています。
2-2.年収400万円世帯の雇用保険料は?
雇用保険の保険料は、月でどのくらいの金額なのか、計算してみましょうか。
年収400万円の世帯
一般的な事業の場合
4,000,000円×0.4%=16,000円 16,000円÷12か月=約1,333円年間の保険料は16,000円 月の保険料は約1,333円 |
農林水産・清酒製造の事業や建設の事業の場合
4,000,000円×0.5%=20,000円 16,000円÷12か月=約1,666円年間の保険料は20,000円 月の保険料は約1,666円 |
パートやアルバイトだったらどのくらいの金額になるのかも、計算してみましょうか。
月の給料が10万円のパートやアルバイト
一般的な事業の場合
100,000円×12か月=1,200,000円 1,200,000円×0.4%=4,800円 4,800円÷12か月=400円年間の保険料は4,800円 月の保険料は400円 |
農林水産・清酒製造の事業や建設の事業の場合
100,000円×12か月=1,200,000円 1,200,000円×0.5%=6,000円 6,000円÷12か月=500円年間の保険料は6,000円 月の保険料は500円 |
3.会社を辞めた時に、失業手当を受けるための給付条件
雇用保険で失業給付が支給されるための条件は以下の通りです。
- ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
こちらがハローワークにて定められている失業給付の受給条件となっています。ざっくりまとめると、
- 基本的に1年以上雇用保険に加入している
- 離職後、ハローワークで手続きをしている
- 離職後、一定の就職活動をしている
こんな感じですね。
雇用保険は、就職しようとする意思(働く意思)といつでも働ける能力がある人を保障の対象としているので、働く意思や働ける能力がなければ失業給付は支給されません。
なので、定年退職でしばらくは就職しないと考えている人、ケガ・病気ですぐに就職できない人、妊娠や出産でしばらくは就職できない人、結婚などの理由から家事に専念するようになりすぐに就職できない人などは、失業給付がもらえませんので注意してください。
ちなみに、会社の都合なんかでやむを得ずに失業してしまった場合だったら、雇用保険の加入期間が6か月でも大丈夫です。「特定受給資格者又は特定理由離職者については、~」とは、そういった意味です。
そんでもって、働く意思や働ける能力なんかが大事になってくるんだね。
4.雇用保険の手当給付|失業したときにどのぐらい支払われるの?
では、実際に失業した時にどのくらいの金額が支給されるのか、見てみましょう。
4-1.雇用保険の失業給付額は、直近6か月間の給与総額で変わる!
失業給付でもらえる金額は、基本手当日額をもとに計算されます。
基本手当日額とは、離職日より前の6か月の給料合計を、180日で割った金額に給付率(およそ50~80%)をかけたものです。この給料の中にはボーナスなどは含まれません。また、給付率は給料が低いほど高くなるようです。計算式にするとこんな感じです。
離職日前の6か月の給料合計÷180日×給付率(50~80%)=基本手当日額 |
例えば、毎月の給料が30万円だった場合は、
(300,000円×6か月)÷180日×給付率(50~80%)=5,000~8,000円 |
となり、基本手当日額はだいたい5,000~8,000円となります。
ちなみに、基本手当日額は年齢によって上限額が決まっています。以下の通りです。
年齢 | 基本手当日額の上限額 |
29 歳以下 | 6,395円 |
30~44 歳 | 7,105円 |
45~59 歳 | 7,810円 |
60~64 歳 | 6,714円 |
それで、この基本手当日額が失業給付として支払われるってこと?
……これだけって安すぎない?
さすがにこれだけではありませんよ。離職した理由や年齢、雇用保険に加入していた期間によって、基本手当日額が支給される日数が決まるんです。その日数分だけ、基本手当日額がもらえるというわけですよ。
支給日数が90日で、基本手当日額が5,000円だったら、
90日×5,000円=450,000円 |
となり、支給される失業給付額は450,000円です。
4-2.離職の理由(種類)によって基本手当日額をもらえる期間(支給日数)が違う?
基本手当日額が支給される日数はどうやって決まるのか、気になりますよね。
支給日数は、年齢や雇用保険に加入していた期間も関わってきますが、一番は離職の理由によって決まります。自己都合や会社都合などの離職で、支給日数は大きく異なります。それぞれ詳しく見てみましょう。
4-2-1.自己都合や定年退職などによる離職
自己都合や定年退職で離職した場合の支給日数は以下の通りです。
年齢と雇用保険加入期間 | 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
こちらの場合は、特に年齢によって差はでません。ただし、離職した際に、雇用保険にどの程度加入していたのかが大きなポイントとなります。10年未満でしたら90日、10年以上で20年未満でしたら120日、20年以上でしたら150日ですね。
4-2-2.会社都合ややむを得ない理由などによる離職
会社都合による離職とは、主に倒産や解雇によるものですね。他にも、職場におけるセクシュアルハラスメントが理由による離職も含まれます。やむを得ない離職は、病気や両親の介護などによるものが当てはまります。
こういった理由によって離職した場合の支給日数は以下の通りです。
年齢と雇用保険加入期間 | 1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上35歳未満 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上45歳未満 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
こちらの場合は、年齢や雇用保険の加入期間によって大きく変わってきていますね。短くても90日、長い場合は330日となっています。
4-2-3.就職困難者の場合
就職困難者とは、身体障害・知的障害・精神障害を抱える人などのことです。就職困難者が離職した場合の支給日数は、以下の通りです。
年齢と雇用保険加入期間 | 1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上65歳未満 | 360日 |
4-3.年収400万円世帯の失業給付金
では、具体的に失業給付がいくらもらえるのか、例を挙げて見てみましょう。
失業者の詳細
所得:400万円 年齢:40歳 離職理由:解雇 雇用保険の加入期間:15年 |
このような条件の失業者であれば、基本手当日額は以下のように計算されます。
4,000,000÷12か月=約330,000円 (約330,000円×6か月)÷180日×給付率(50~80%)=5,500~8,800円 |
基本手当日額は、およそ5,500~8,800円ですね。ただし、40歳だと、基本手当日額の上限額は7,105円です。なので、基本手当日額はおよそ5,500円~7,105円となりますね。
年齢が40歳、離職の理由が会社都合、介護保険の加入期間が15年ということなので、支給日数は240日です。そうなると、失業給付でもらえる金額は、
5,500円×240日=1,320,000円 7,105円×240日=1,705,200円 |
という計算になり、およそ1,320,000円~1,705,200円です。
5.失業手当申請の手続きの流れ
雇用保険の失業給付でもらえる金額がどの程度か分かったところで、実際にこの給付をもらうためにはどのような手続きの流れになるのかを見ていきましょう。
5-1.会社から離職票を交付してもらう
まず、勤めていた会社から離職票を交付してもらいます。離職票とは、どのような理由で離職したかなどの情報が記入されているものです。会社に請求しないともらえない場合が多いので、忘れないようにしましょう。
5-2.住んでいる住居を管轄するハローワークに離職票を提出する
会社から交付してもらった離職票を、住んでいる地域を管轄しているハローワークに提出します。ここで注意すべきは、勤めていた会社の地域を管轄しているハローワークではない点です。必ず自身が住んでいる地域のハローワークで提出してください。
5-3.ハローワークで受給資格を判断してもらう
ハローワークに離職票を提出すると、その離職票をもとに雇用保険が適用されるかどうかが判断されます。特に問題がなければ、提出したその場で受給資格を認められて次のステップに進みますが、何か問題が見つかると、確認に時間がかかったり、受給資格が認められない場合があります。
5-4.雇用保険受給者初回説明会に参加する
受給資格が認められると、ハローワークが実施する雇用保険受給者初回説明会に参加することになります。ハローワークの指示に従って参加しましょう。
5-5.4週間に1度、失業の認定を行う
原則として、ハローワークに通ってから4週間に1度、ハローワークに行き、そこで失業の認定を受ける必要があります。こちらは、現在失業の状態であるか、再就職のために積極的に活動しているかなどをチェックするものです。具体的には、就職先が決まったか、どれくらいの頻度で説明会に行っているか、どれくらいの頻度で面接を行っているかなどが確認されます。失業の状態が続いており、再就職のために積極的に活動していることが認められれば、その日からだいたい1週間以内に4週間分の失業給付が振り込まれますよ。
ただし、ハローワークで最初の手続きをした日から7日間は、待期期間とされ、支給日数には数えられません。最初は、4週間から7日間を引いた21日分だけ、失業給付が支払われるということですね。また、自己都合により退職した場合は、待期期間が終わってからの3か月間が支給日数に数えられません。待期期間が終わってから3か月経たないと、失業給付の支給が始まらないというわけですね。
6.まとめ
- 雇用保険とは、失業した人の再就職の活動を金銭的に援助してくれる保険
- 雇用保険料は、一般的な事業だと給料の0.4%、農林水産・清酒製造・建設の事業だと給料の0.5%
- 失業保険の給付条件は、原則以下の通り
- 基本的に1年以上雇用保険に加入している
- 離職後、ハローワークで手続きをしている
- 離職後、一定の就職活動をしている
- 失業給付は、離職の理由によってもらえる金額が大きく異なる
- 失業給付の手続きは、会社から離職票を交付してもらい、住んでいる地域を管轄するハローワークに提出するといった流れになっている
失業給付がもらえないから損だ!ではなく、新しい就職先が早く決まったから良かった!って考えた方が建設的です。失業給付でもらえるお金はあくまでも再就職の活動を援助するものですからね。
できる限り雇用保険にお世話にならないよう、僕もリストラされないよう気を付けなきゃなぁ。
それにしても、不況でリストラって怖いよね。
僕のお財布も不況がやばくて、諭吉さんが何人もリストラされてて、なんかもう本当にやばい気がする。チラッチラッ