保障期間が満了すると満期保険金が支払われる養老保険。月々の保険料が高い一方で、貯金機能に特化しているため、保障と合わせた資産運用の一助を担っています。今回は、養老保険のメリット・デメリットを踏まえた上で、損する人・得する人を紹介します。
それっていったい……。
では、現在の養老保険はどうなってしまったのでしょうか?
これから詳しく説明していきますね!
1.養老保険とは?
契約中に亡くなれば死亡保険金を、無事に契約を迎えられれば満期保険金を受け取れる保険が、養老保険です。どちらに転ぼうが、必ず保険金が支払われる仕組みになっています。
死亡保険金と満期保険金は同額で、トータルして支払う保険料よりも高いです。なので、死亡保障を付けつつ、貯金を積み立てられる保険として脚光を浴びていました。
バブル期の頃は、予定利率5%超えのお得商品として人気だったんです。
ですが、現在だと養老保険の予定利率がとても低く、あまりおすすめのできる商品ではなくなってしまいました。保険料の支払い方や期間で左右されますが、基本的に金利も良くありません。
ただ、他の保険よりも高い貯蓄性を持っているので、使い方によっては得する人もいます。満期保険金での資産運用は、独立資金・ローンの頭金・子どもの学費・旅行資金・老後資金・生前贈与・遺産の相続額の調整なんかに有効ですね。
2.養老保険のメリット
2-1.死亡保険金額と同等の満期保険金が支払われる
養老保険の大きなメリットは、掛け捨ての定期保険と違って支払った保険料が満期保険金として戻ってくることです。亡くなっても亡くならなくても保険金がもらえるというのは、保険料をムダにすることがないので嬉しいですね。この満期保険金のおかげで、保障を付けつつ貯金することができます。
満期には、3年、5年、10年、15年、20年、25年、30年といった年を単位とする満期と、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳といった歳を単位とする満期があるます。
お金が必要な時期に合わせた満期設定をすると、満期保険金を貯金として有効に使うことができますよ。
2-2.終身保険よりも貯蓄性が高い
養老保険は、あらゆる保険の中で一番貯蓄性が高いと言われています。これは、まず最初に貯金の額(満期保険金)を決め、その金額に向かって保険料を支払うためです。
終身保険も養老保険と同じく貯蓄の機能を持っていますが、貯金の額(解約返戻金)は決めません。定めるのは死亡保険金であり、そこから保険料が割り出されます。なので、同じ条件だと養老保険よりも貯まる金額が少なくなるんです。
実際に数字で確認してみましょう。
30歳の男性が加入した死亡保険金1,000万円の終身保険
〈終身保険:60歳払込〉 | |
月々の保険料 | 18,380円 |
60歳までの合計保険料 | 6,616,800円 |
解約返戻金 | 7,146,144円 |
同じ条件で加入した養老保険
〈養老保険:30年満期〉 | |
月々の保険料 | 26,460円 |
60歳までの合計保険料 | 9,525,600円 |
満期保険金 | 10,000,000円 |
終身保険では約715万円の貯金(解約返戻金)ができます。一方で、養老保険だと1,000万円の貯金(満期保険金)ができます。
このように、同じ条件だと養老保険の方が貯まる金額が高くなるんです。
2-3.満期前でも解約返戻金が高い
満期前の養老保険の解約返戻率は、終身保険に比べてかなり高く、早い時期に90%を超えます。期間が契約年数の半分を過ぎれば、ほとんどの商品で90%を超え、中には95%に至ることも。
契約期間の半分を過ぎても、60%代に留まりますね。基本的に、終身保険は満期前の解約返戻率が極端に低くなっています。満期の1年前だったとしても、70%を超えるかどうかです。
途中で解約しても90%程度の金額が戻ってくることからも、貯蓄の機能に優れていると言えますね。そのため、終身保険よりかは見直しがしやすくなっています。もちろん、満期前の解約は元本割れを起こしてしまうため、できる限り避けるべきですけどね。
3.養老保険のデメリット
3-1.月々の保険料が高い
養老保険の保険料は、終身保険以上に高くなっています。支払いが厳しくなって途中解約すると、解約返戻率が高いとは言え、元本割れで損をしてしまうので、無理な金額での契約はおすすめできません。
養老保険は、基本的に保障の付いた貯金だと考え、貯金に回せる金額の保険料で検討すべきです。
3-2.予定利率・金利が低い
現在の養老保険は予定利率がバブル時代のものより3%以上低くなっています。低金利も続いているため、支払う保険料の合計が満期保険金より高くなるなんてことが。投資や利回りの良さを求めるのなら、養老保険は適しているとは言えません。
加入を検討する際は、必ず支払う保険料の合計と満期保険金の差を計算しましょう。
3-3.更新ができない
養老保険は基本的に更新ができません。なので、満期を過ぎると、死亡保障が無くなります。引き続き保障が必要な場合は、あらたに契約しなくてはいけません。年齢や健康状態によっては契約できないこともありますので、定期保険や終身保険にあらかじめ加入しておくなどの対策が必要です。
もちろん、満期保険金で今後の費用はまかなえるのであれば、他に死亡保障を付けなくても大丈夫です。
養老保険を利用する際は、あくまでも目的は貯金だと考え、保障はおまけとして捉えておいた方が良いですね。
4.養老保険で得する人
養老保険は、予定利率や金利の低さからデメリットの面が強調されがちですが、得する使い方はちゃんとあります。
実際に養老保険で得するのはどんな人なのか、利用方法と一緒に見ていきましょう。
4-1.学資保険として子どもの学費を作りたい人
養老保険の利点は、保障を付けながら貯金を作れるところ。加えて、貯めたい金額と期間を好きに決められる点も利用価値が高いです。
なので、何か大きなお金が必要な時期があらかじめわかっていれば、それに合わせて養老保険で貯金作りができます。
具体的には、学費のために利用するのがおすすめですね。子どもの学費で最もお金がかかるのは、大学入学時です。このタイミングを満期にし、必要となる金額を満期保険金として設定すれば、万が一亡くなったとしてもお金を確保することができます。
通常、銀行で学費を貯めようとすれば、亡くなった時はそれまで貯めた金額しか残りません。ですが、養老保険なら貯め始めた翌日に不慮の事故で無くなっても、貯めたかった金額が手に入ります。
また、毎月必ず保険料が引かれるので、貯金が苦手だという人には強制的な貯金方法として有効ですよ。
4-2.個人年金保険として老後の資産を形成したい人
養老保険には、個人年金保険としての使い方もあります。満期保険金は年金のように分割して受け取れますので、国民年金や厚生年金に加算して老後資金をまかなうことができます。
養老保険は貯蓄性が他の保険よりも高いので、「将来、できる限り多くのお金を残したい」といった人に向いている保険になりますね。
ただし、死亡保障と貯蓄機能は養老保険の方が充実していますが、金利の高さは個人年金保険に分があります。個人年金保険と比較してから検討すべきですね。
4-3.死亡退職金等の福利厚生での利用(法人)
養老保険は死亡に関係なく必ず保険金をもらえますので、企業の場合、節税と退職金の準備としてお得に使うことができます。
ただし、社員全員の加入が原則になっているので、会社の利益や業績を十分に加味した上で検討する必要があります。
4-4.損金処理による節税での利用(法人)
法人の場合、養老保険で支払った保険料を損金計上できるというメリットがあります。利益額を減らして、法人税の対策に有効活用することができますね。
被保険者と受取人によっては、保険料の全額を損金計上できますよ。
5.養老保険で損する人
次は、養老保険の利用が好ましくない人について見てみましょう。
5-1.保険料の支払いに不安が残る人
養老保険のネックは月々の保険料の高さです。支払った保険料がそのまま貯蓄になるとはいえ、月々の保険料で家計を圧迫させるのはおすすめできません。
将来への貯金は大切ですが、日々の生活がままならず途中で解約してしまえば、損をしてしまいます。
月々の保険料の比較【定期保険・終身保険・養老保険保険料】
(30歳男性が死亡保険金1,000万円で60歳を満期に設定した場合)
定期保険 | 終身保険 | 養老保険 | |
月々の保険料(30代) | 2,510円 | 18,380円 | 26,460円 |
月々の保険料(40代) | 3,840円 | 18,380円 | 26,460円 |
月々の保険料(50代) | 7,370円 | 18,380円 | 26,460円 |
保険料の総額 | 1,646,400円 | 6,616,800円 | 9,525,600円 |
満期時に受け取れる金額 | 0円 | 7,146,144円 | 10,000,000円 |
上記の表は、保険料の例です。月々の負担を抑えるのなら、保険料の安い定期保険が一番ですね。ただし、満期時に解約返戻金や満期保険金がないので、貯金はできません。
5-2.大きな保障金を用意したい人
そもそも養老保険では、3,000万円や5,000万円といった大きな死亡保険金に対応していません。実際に、かんぽ生命の普通養老保険「新フリープラン」でも、保険金の上限は1,000万円までになっています。
中には、1,000万円以上の商品を販売している保険会社もありますが、保険料が高くなりすぎるためおすすめはできません。
終身保険以上に、死亡保険の額を比例して月々の保険料が高くなりますよ。例えば、30歳男性が死亡保険金3,000万円、満期を60歳に設定して養老保険に加入したとします。
この場合、月々の保険料はおよそ8万円で、支払う保険料の総額は2,850万円ほど。同じ条件で終身保険だった場合、月々の保険料はおよそ5万5千円で、支払う保険料の総額はだいたい2,000万円です。
保険料の負担が増えるので、終身保険も大きな保障金を準備したい人に向いていないと言われていますが、養老保険はそれ以上と考えて良いですね。
5-3.投資目的で保険を利用したい人
現在販売されている養老保険は、予定利率と金利が非常に低くなっています。余計な特約を付けず、シンプルな契約内容にすれば基本的に元本割れを起こしませんが、中には支払った保険料が満期保険金を超えてしまう商品が存在するんです。
見返りの大きさを目当てにして投資するのであれば、金利が高い終身保険の方が向いていますね。
6.養老保険は運用商品として考えるべき
結論として言えるのは、銀行の普通預金や定期預金で積み立てるのであれば、保障があって貯める期間と金額を自由に選べる養老保険の方が有利、ということです。
養老保険は、ローリスクローリターンの安定した資産運用に適している保険です。現在の養老保険だと、単純なお金の利益では、大きなリターンを得ることはできません。ですが、ほとんどノーリスクで運用することができるため、リスクを抱えず確実に金額を増やして貯金をするのには向いているんです。
学資保険として利用できる養老保険は、保険つきの積立商品として、リスクなく満期保険金を受け取れます。投資や運用の経験がない人にとっては、比較的高いリターンと言えますね。
養老保険は【保障というメリット付き貯金】と捉え、運用商品として考えましょう。
7.養老保険の使用例
実際に、養老保険を利用した人の具体的な例を見てみましょう。
7-1.退職までに1000万円を作った例
安藤さん、男性、30歳、中小企業勤務、独身 安藤さんの月収は40万円、ボーナスは2回、定年は60歳です。退職しても、退職金はしっかり出るようです。しかし、大手企業とは比べものにならないとの噂が……。入社時にはあまり気になりませんでしたが、やはりまとまった額の退職金は欲しいところ。そんなことを考えているうちに、定年までに1000万円を作りたいと本気で思うようになりました。そこで安藤さんが加入したのが養老保険。死亡保障が付くのもそうですが、どうせ保険料を支払うのなら、しっかりと老後に役立つ貯蓄に活かそうと考えたからです。今では退職金代わりに満期保険金で1,000万円を貯めることが安藤さんの目標となっています。月々の保険料は約2万7千円と高額ですが、長期間で着実に貯めようと、月の出費を見直したそうです。 |
7-2.収入が途絶えた時に、当座の費用に利用した例
馬場さん、男性、45歳、家電メーカー勤務、妻・子どもあり 馬場さんの勤め先の会社では、ここ数年来業績が芳しくなく、突然業界大手の傘下に入ることになりました。社内で徹底したリストラが実施され、ほんのわずかの退職金を手に、馬場さんたちも多数の同僚と共に長年勤めた職場に別れを告げることに。しかし、給料はなくても、家族の生活は続きます。住宅ローンだってまだまだ健在。実は馬場さん、このような不幸に見舞われることを10年以上前から予想していたため、養老保険に加入していました。養老保険は早期の段階で解約返戻率が90%を超えるので、いざという時に役立つ資金を確保できるからです。何事もなければ老後の資金に、突然収入が減ったら当座の費用として、養老保険に目を付けていたのです。元本割れを起こしてしまいましたが、貯まっていた500万円の95%である475万円を解約返戻金として受取りました。そのお金をおかげで転職活動に専念できたそうです。 |
8.まとめ
- 養老保険のメリット
- 貯蓄性が高く、保障を付けながらお金を貯められる
- 早期の段階で解約しても、元本割れの被害が少なく当座の費用に使える
- 子供の教育費や老後資金などに向けて、資産運用しながら計画的な貯金ができる
- 養老保険のデメリット
- 月々の保険料が高い
- 現在だと予定利率・金利が低いためハイリターンを求める投資目的には適さない
- 大きな保障金は付けにくく、保障は一定の期間のみ
- 養老保険で得をする人
- 学費や老後の資金など、お金が必要になる時期に確実に貯金を作りたい人
- 安定した資産運用を求める人
- 節税をしながら死亡退職金を作りたい企業
支払った保険料の倍額を満期保険金で受け取れたりするので、安易に解約しない方が良いですよ。
過去の人気保険も、今じゃ日陰保険かぁ。
加入や見直しの際は、そういった点もしっかりチェックしないとだね。
たまには本職の人も頼ってください。